【産業天気図・建設機械】日米欧の主要3極で壊滅的、土砂降りの中で経済対策と新興国需要に望みつなぐ

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予想天気
 08年10月~09年3月   09年4月~9月

サブプライム危機からはじまった世界経済の大後退により、建設機械業界もかつてない急激な需要減に直面している。2008年度後半は土砂降りの「雨」、09年度前半もさらに雨足が強まりそうだ。

建機業界は08年度前半まで「晴れ」だった。国内不動産、建設の減速を受けて国内需要が減少傾向にあったものの、総需要の3分の2以上を占める輸出が依然として好調に推移していたためだ。前半の「貯金」が大きいから、出荷の最新累計値を見ても失速感は感じられない。日本建設機械工業会による出荷金額統計は、08年4月~10月累計は国内が14%減と厳しいが、輸出は11%増で、全体で2・6%の増加だ。

しかし夏以降、肝心の外需は急変している。住宅バブル崩壊ですでに需要が冷え込みつつあった米国向けに加え、比較的底堅いと思われていた欧州市場にも急ブレーキがかかったのだ。米キャタピラが圧倒する米国市場に対し、日本の大手メーカーはそもそも欧州市場に強い。各社とも欧州で流通在庫が急速に積み上がっており、これを受けて国内工場で緊急減産が始まっている。これが、前回は「曇り」だった08年度後半の予想が「雨」に転じた主因だ。

11月発表の08年4~9月期決算では、コマツ<6301>、日立建機<6305>、TCM<6374>など主要会社が軒並み今09年3月期の営業益予想を増益から減益に暗転させた。

ただ、生産調整など各社の対応は実に素早かった。生産現場を非正規雇用が支える構造になっているために、在庫膨張とほぼ同時の減産開始が可能なのだ。最大手のコマツは2000人の非正規雇用者を500人まで減らす可能性を示唆。非正規社員の雇い止めは日本経済と社会全体には深刻な悪材料だが、早期の生産調整実施は各社の業績の落ちこみを減殺する。需要減に加えて円高で輸出採算が大幅に悪化しているにもかかわらず、各社の利益減額幅がそれほど大きなものでないのはそのためだ。

また、主要大手が扱う大型建機は、インドネシアや豪州などの資源開発向けが依然として力強い。一大市場に成長した中国で緊急経済対策が行なわれるなど、国家規模のインフラ整備需要も底堅いと見られている。とはいえ、「10月に入ってから中東産油国向けの出荷がパタリを止まった」と証言するメーカーもあり、各社が下支えを期待する新興国市場もまだら模様なうえに先行き不透明である。

一方、国内大手の減産を受けて、部品、部材を提供するメーカーにも生産調整が広がっている。一部大手は、部品メーカーや協力工場を集めて「今後は発注が半分になる」と通告したようだ。コマツ中心に建機向け六角ボトルを生産する共和工業所<5971>は12月半ばに09年4月期の営業益予想を従来比約4割減と大きく下方修正したが、これは下期の利益がほぼ消滅する水準だ。国内需要の予測は、日を追う事に悪化してきている。
(山崎 豪敏)

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