政府・銀行業界に申し上げる、新自己資本比率の一時的凍結実施を

「全治3年」と言う麻生太郎首相による日本経済への見立てが正しいかどうかはともかく、そのための処方箋を語る際の首相発言に頼りなさを感じてしまうのはなぜか。「危機」を連発しているにもかかわらず、その口調にはシリアスさが欠如しているように思えてならない。

実体経済の実情は極めて厳しい。中でも信用収縮の影響はしだいにただならぬ様相を呈し出している。年越え、年度末越えという1年で最大の資金需要期を迎えて、企業の資金繰り破綻が一触即発の事態となっている。

何しろ、社債、CP(コマーシャルペーパー)といった直接金融手段による資金調達が著しく困難になっている。この結果として、一般事業法人による資金調達の動きは駆け込み寺のように銀行借り入れに集中しているが、銀行はその需要に十分に応じきれそうもない。

制度的な悪循環メカニズム

その実情を踏まえて、日銀は12月2日に金融市場への資金供給手段の拡大を発表。市中銀行が日銀からの資金供給を得るために差し入れる担保の対象拡大という措置と、共通担保の範囲内で無担保コール翌日物レートの水準で、3カ月などの短期資金を市中銀行が調達できるという措置の導入である。

期限を来年4月末と定めて同措置を実施するのも、年度末越え資金調達が集中する局面における流動性供給に万全を尽くすためである。効果が発揮されることを期待したい。しかし、率直に言って効果は限定的と言わざるをえない。

日銀による金融市場への資金供給は金融市場の流動性危機を緩和し、銀行の資金繰りを助けることにはなるものの、その先にある銀行から実体経済、つまり一般事業法人への資金供給が拡大するという保証は何もない。日銀の資金供給拡大は銀行の与信能力向上の下地を作ることにはなっても、実際の与信行動にはつながらないということである。

経済危機の世界的な広がりを受けて、ワシントンに20カ国の首脳が集まったのは11月15日だった。この金融サミットでは短期、中期の行動計画が策定されている。その中で重視されるべき一項目がある。「規制の枠組み」として「当局による規制の景気循環増幅効果(プロシクリカリティ)の緩和」である。

プロシクリカリティは、規制のあり方によって、景気の拡大、縮小の循環メカニズムが増幅されることを指す。1990年代の金融危機の際には、銀行の自己資本比率規制(BIS規制)上の自己資本に保有株式含み損益が算入できる仕組みがプロシクリカリティを生んだ。

「株価下落による含み損発生→銀行の自己資本比率低下→与信能力減退(貸し渋り、貸し剥がし)→景気悪化→株価の続落→銀行の自己資本比率低下……」という悪循環メカニズムである。

このパターンに陥るリスクが現在もあるのは、当時と同じ枠組みが自己資本比率規制に残されているからである。しかし、今はそれだけではない。2007年度からわが国は、国際自己資本比率規制のニューバージョンであるバーゼルIIを欧米諸国に先駆けて導入している。

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