一芸への自信が、我が子の人格を育む ペンギンさんに学ぶ「自転車修理」と「食べるラー油」の共通点

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学生時代の成績と、豊かな人生は関係なし

最近、そのような美しくて羨ましい人の一人と再会しました。中学生時代、クラスでは存在感の薄かった旧友と、半世紀ぶりに同窓会に出席したときの経験です。

その人は高校を卒業して始めた習い事が、詩吟に合わせて踊る“仕舞い”でした。特別な縁があったわけでもなく、なんとなく選んだ習い事のようでした。本人曰く「(マイナーすぎて)恥ずかしかったから誰にも言わず、内緒で始めて内緒で続けた」そうです。

「他にすることがなかったこともあって、舞うことが楽しかった」彼女は、結婚後も“仕舞い”を継続しました。いまや流派を起こして館長となり、65歳の今も大勢の弟子を抱えて飛びまわる毎日です。誰よりも輝き、生き生きと仕事の話をしてくれる彼女からは、往年の存在感の薄かった姿を想起するのは難しいことでした。研鑽を積み、継続することで一芸に自信をつけた人の、その年代でなお生き生きとしていて昔よりずっと美しく、輝いていた姿はまぶしい限りでした。

他の中学校の同窓会の幹事をした友人も、同じ感想を言っていました。「学生時代の成績と、豊かな人生を歩むことには、ほとんど関係がないと確信しました」と記したメールがきました。成績はよくなかったのに、鉄工所を経営しながらよき家庭を築いている人、小さな会社勤めをしながら同人誌に小説を書いて、好奇心ますます旺盛な人など、職業とするか趣味で終わるかは別にして、一つのことに秀でるか得意とするか没頭できる人は輝いていて、話していても楽しかったとのことです。

「自転車修理」と「食べるラー油」の共通点

このようなときの例はいつもイチローですが、今回は辺銀暁蜂(ぺんぎん ぎょうほう)さんにご登場願いましょう。ご存知、石垣島の元祖食べるラー油を開発した人です。辺銀さんは元中国人。日本人女性と結婚して日本人に帰化するときに自らつけた名前が、大好きなペンギンを漢字にあてて日本で唯一の「辺銀」姓。

私の記憶が間違っていなければ、旅回り劇団の団長か芸人だった父親に連れられて、各地を転々として育ったそうです。父親が辺銀さんに与えた重要なメッセージと言えば「自転車が修理できれば、生きていける」ということだけでした。

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