金正恩が新年挨拶で米国に示した警告の真意 非核化交渉再開と核開発への回帰を同時表明

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もちろん、「過去への回帰」よりは「アメリカとの関係改善」に金委員長の本心があるとの見方が有力だ。しかし、前出の鄭氏は「金委員長の新年の辞は、どこまでもアメリカとの対話と公正な交渉に力点が置かれているため、並進路線へ戻る可能性はとても低い。アメリカが今後なんらかの適切な回答を北朝鮮に与えられなければ、北朝鮮内部で並進路線へ回帰する可能性があるとの警告をこれからもするだろう」と述べた。

鄭氏はまた、「北朝鮮が寧辺の核施設の廃棄というカードを取り出した状況において、アメリカが北朝鮮に対しさらに要求をすることは無理だ。現在では、金委員長のソウル訪問や2回目の米朝首脳会談の開催を推進することよりは、米韓が相応のカード(北朝鮮が行った非核化への措置に相応する米国の対応)をすみやかに用意し北朝鮮に提示することがとても重要だろう」と言う。

金委員長は背水の陣を敷いたのか

韓国・統一研究院北朝鮮研究室の洪珉(ホン・ミン)室長は、「新年の辞を見ると、金委員長が年内にアメリカと領事級、あるいは大使級の関係をつくりたいという意思が強いことが読み取れる」と指摘する。さらに、「トランプ大統領に対し強い信頼を見せたが、これは交渉の枠をしっかりと維持するという意思の現れだ。ただ、アメリカが北朝鮮を信頼しない場合、過去への回帰といった方向へ行かざるを得ないと言ったことで背水の陣を敷いたのだろう」と見る。

韓国・国家安保戦略研究院は「『新たな道を模索」という驚異的なメッセージはあるが、『やむを得ず』という言葉を使ったことと、『模索せざるをえなくなるかもしれない』というもったいぶった言い方など、婉曲な表現を使ったことは、強硬と穏健の狭間で揺れる金委員長の悩みを反映したもの』と見ている。

金委員長の希望通り、非核化交渉の進展による2回目の米朝首脳会談の開催が確定すれば、2018年末に行われるはずだった金委員長のソウル訪問が先行する可能性も高い。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の仲裁者的な役割が必要となるためだ。韓国の与党「共に民主党」の李海瓚(イ・ヘチャン)代表は1日、党の集会において「南北首脳会談が今年、おそらく早いうちに行われる可能性が高い」と述べた。

パク・ギソク 「ソウル新聞」記者
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