2019年の安倍政権に渦巻く「7年目の不安」 選挙が目白押しの中、アベノミクスに危機

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もちろん首相にとっての最大の難関は、7月下旬に予定される参院選だ。今年7月、国会で定数6増(選挙区2比例代表4)を盛り込んだ公職選挙法改正が成立したことで、来夏の参院選の改選は124議席(同74同50)となる。

今回改選の対象となる2013年参院選では、自民党が2001年以降で最多となる65議席(同47同18)を獲得、特に1人区では自民が29勝2敗と完勝した。自民党は2016年参院選でも56議席(同37同19)と圧勝して27年ぶりに単独過半数を回復し、憲法改正に前向きな一部野党も加えたいわゆる「改憲勢力」が、参院でも「3分の2」を超えた。

ただ、2019年の参院選以降の「3分の2勢力」維持には、2013年並みの自民大勝が必要だが、「現状では50議席台前半に留まる」(選挙専門家)との見方が多い。32の1人区で主要野党が統一候補を擁立すれば、「自民党は20議席獲得が精一杯」(同)とされ、残る13の複数区でも自民複数当選が見込めるのは1~2区しかない。

さらに、比例代表も2017年衆院選での各党の得票などから推計すれば、「自民が20議席を超えるのは困難」(自民選対)との見方が多く、自民合計議席は改選前を大幅に下回る50台前半というのが「常識的見方」(同)だ。その場合、参院全体で自民党は単独過半数を大きく割り込み、「改憲勢力3分の2」も消滅することになる。

第1次安倍政権で実施された前回の「亥年選挙」の参院選(2007年7月)では、自民党が37議席という歴史的惨敗を喫し、9月の首相退陣につながった。それだけに首相は「何としても汚名をそそぎたい」と秘策を練っているとされる。

「7.28同日選」も取らぬ狸の皮算用

そこで浮上してきたのが「衆参同日選」断行論だ。通常国会が1月28日召集となれば会期末は6月26日で、会期延長がなければ参院選は自動的に7月21日投開票となる。6月28、29両日にはG20首脳会合が大阪で開催されるが、首相はこれに合わせて来日する予定のプーチン・ロシア大統領との日ロ首脳会談で、「残された最大の外交課題」である日ロ平和条約締結と北方領土問題での「基本合意」に強い意欲を示している。

このため、永田町では「歴史的な日ロ合意を大義名分に、首相が“日ロ解散”に打って出る」(自民長老)との憶測も広がる。その場合は、短期会期延長による7月初旬解散・28日投開票という「7.28同日選」となる可能性が大きい。

過去2回行われた同日選はいずれも自民党が圧勝した。今回も「政権選択選挙となる衆院選をかぶせれば、野党選挙共闘は破綻する」(自民選対)との見方が多い。「野党共闘潰しの秘策で、首相の国政選7連勝となれば、参院選後の憲法改正実現にも弾みがつく」(細田派幹部)という期待もある。

ただ、“超難題”の北方領土問題で「歯舞・色丹の2島先行返還」への道筋すら明確にできなければ、「同日選どころではなくなる」(自民選対)ことも予想され、現時点では「まさに、取らぬ狸の皮算用」というのが実態だ。

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