ポスト安倍を狙う石破茂氏に勝機はあるのか ホテル・ニューオータニで盛大なパーティ

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それは翌18日昼に同ホテル鳳凰の間で開かれた金田勝年自民党幹事長代理のパーティーと比較しても寂しさは際立つ。

金田氏のパーティーには前日に退院したばかりの二階俊博幹事長と菅義偉官房長官は不参加だったものの、麻生太郎副総理兼財務相や加藤勝信総務会長、茂木敏充経済再生担当相、片山さつき内閣府特命担当相などそうそうたるメンバーが次々と挨拶に立った。予定になかった原田義昭環境相まで駆けつけ、壇上で一言述べている。

なお石破氏のパーティーと同時刻に開かれた野田氏のパーティーには、加藤総務会長や河村健夫元官房長官も参加し、乾杯の際には舞台に上がって花を添えていた。これらと比較しても、石破氏のパーティーはなんとなく寂しい。

「出ない方がおりこうさんだったかもしれない。しかし自民党は国民政党。その自民党員に対して選択肢を提示するのは自民党の責任だ」

ほぼ16分にも及んだ石破氏の返礼の辞には、次期総裁選への意欲が見えるものの、「(総裁選は)初出馬以来の辛い選挙だった」といった恨み節も含まれた。

では2021年の自民党総裁選がどうなるのか。予定通り3期の任期がまっとうされるなら、第2次安倍政権は9年という記録的長期政権となり、その後は安倍首相はキングメーカーとして政界で君臨することは間違いない。その場合の“ポスト安倍”は石破氏よりも岸田文雄政調会長や加藤総務会長などが取り立てられる可能性は高く、短命政権が続くとも見られる。そうした予想の中で注目すべきは、自民党参議院の要である吉田参議院幹事長のこれからの動きだろう。

吉田氏の去就と石破氏との微妙な距離感

吉田氏は故・金丸信元自民党副総裁の公設秘書を務め、長野県議を経て2001年の参議院選で初当選した。2016年から参議院幹事長として辣腕を振るい、参議院自民党をまとめてきた。

そもそも自民党参議院は固有の“金庫”を持ち、党本部からの干渉をほとんど受けることがないと言われている。かつて村上正邦氏や青木幹雄氏が“ドン”として君臨し、政界に広く影響力を振るったのはそれゆえだ。

そのように考えるなら、9月の総裁選で吉田氏が石破氏を支持したのも、青木氏からの指令もあったものの、参議院の独自性を発揮しようとしたからだともいえる。そもそも山口県柳井市に生まれ、10歳まで育った吉田氏と安倍首相はまさに同郷人。2020年までに憲法改正を果たすことが悲願の安倍首相には、参議院の全面的な協力が不可欠であることも明らかだ。

その吉田氏は2019年夏の参議院選で改選を迎えるが、前回から1人区となった長野選挙区からの不出馬を宣言し、小松裕元衆議院議員を後継指名した。比例に転出するとの噂もあるが、吉田氏は「12月末に進退を表明する」と先延ばしにしている。

しかし出馬表明は選挙半年前がタイムリミット。また吉田氏は次回の参議院選から導入される「特別枠」の利用を否定したが、官邸が強力な後援団体を付けるとも見られている。

ポスト安倍で誰が一番笑うのか。次期参議院選を前にその布石は打たれつつある。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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