【産業天気図・化学】需要減が痛打、09年度前半も原燃料安効果薄く前回予想より悪化して「雨」へ

予想天気
 08年10月~09年3月   09年4月~9月

化学業界の2008年度後半は「雨」。08年度前半は「史上まれに見るナフサ(粗製ガソリン)価格」(土屋隆・東ソー<4042>社長)が各社の収益を大きく圧迫したが、後半は一転して価格急落による在庫評価損が響く。加えて主要仕向先である「ITや自動車向けでの想定超の需要減」(小林喜光・三菱ケミカルホールディングス<4188>社長)が直撃する。09年度前半は原料ナフサ価格が安値安定で推移すれば、原料価格と製品価格の値差であるスプレッドの改善が見込めるが、引き続き需要減が尾を引く。前回予想(9月)の「曇り」から一転して「雨」に悪化する見通しだ。

「環境が激変している。今はまさに変曲点、関数で言えば二次微分がゼロの状態だ」。業界最大手の三菱ケミカル社長の小林氏は独特の表現で現在日本の化学業界が置かれている状況をこう表現する。

今09年3月期同社は前期に完全子会社化した旧田辺三菱製薬の業績がフルに連結で寄与するため、期初には営業利益を前期比26.4%増の1580億円と予想していた。だが、今上期は騰勢を強める原料ナフサ価格に対して、十分に値上げ転嫁が進まず、基礎石化製品などを中心とするケミカルズ事業と、ポリカーボネートなどを中心とするポリマーズ(合成樹脂)事業でそれぞれ51億円と112億円の営業赤字を計上。08年4~9月期決算発表時には1250億円へ営業益を減額修正したが、「会社四季報」09年新春号では、1200億円(前期比4%減)が妥当だろうと予想している。同社は上記2事業で下期に原料安効果を見込みスプレッドの改善を見込むが、「景気後退によるダメージ」(小林社長)の悪化幅が前者を上回り、さらに同社の収益を圧迫するだろう。

三菱ケミカルの例は、化学業界全般の状況を如実に表している。自動車部品、医療用途(器具、容器、医薬包装)などに使われるポリプロピレンで国内シェア首位の三井化学<4183>も、これまでに二度にわたって今期見通しを修正した。まず、08年4~6月期決算発表時に、売上高は期初計画から増える一方、営業利益は期初計画比32%減の450億円になると見通しを修正。さらに、10月末には売上高を従来予想から引き下げた一方で、営業利益は第1四半期発表のままに据え置いた。ただ、「四季報」新春号では、会社計画は過大とみて、営業益は前期比53.9%減の356億円にまで落ちこむと見ている。稼働率を50%以下まで落としている中国向けのウレタン原料TDIは、「すでに商いは成立していない」(藤吉建二社長)ほど落ち込んでいる。

ハードディスク外販首位でアセチル・チェーンと言われる酢酸等の製品群を持つ昭和電工<4004>も前期比57%減の340億円にまで営業益は下降する。旭化成<3407>も期初には微増益を見込んでいたが、中間期決算発表時に営業益を従来計画比25.8%減の950億円にまで下方修正。ただ、リチウムイオン二次電池材料が堅調であるものの、ケミカルズの不振が深刻と捉え「四季報」新春号では営業益850億円まで独自に減額している。

今期は需要減のみならず、原料ナフサ価格の乱高下も曲者だ。東ソーの場合は、ナフサ価格1万円の下落で25億円の在庫評価損が計上される。まさに「さじを投げたくなる状況」(有馬雄造・常務取締役)であることは間違いない。

唯一増益を達成しそうなのが信越化学工業<4063>だ。SUMCO<3436>、JSR<4185>といった機能系材料が世界でトップ級のシェアを持つ各社ですら、「ほぼ壊滅状態」(西村修一・野村證券金融経済研究所素材産業調査室長)だが、それでも信越は14期連続の増収増益の快挙へ突き進んでいる。ウエハでのユーザーとの長期契約に加え、塩ビで世界中の販売網を最大限に生かしていることが奏功している一方、相互補完的に収益を底支えする仕組みが景気悪化で揺らいでいるのも事実だ。第3四半期の仕上がりを見るまで、予断を許さないが、「誤差の範囲」(金川千尋社長)で収まるのであれば、前期まで償却期間の短縮を進めてきたことなど、同社の秀逸な経営判断が改めて浮き立つ。苦しい中でも、「血を流す合理化」(同)を進めることができる企業のみが、今回の苦境から脱出できるプレーヤーとなり得るだろう。

構造的な供給過剰状態で「もともと3~4社あれば十分」(高下悦二郎・三菱ケミカル取締役常務執行役員石油化学分担)とさえ言われる石油化学コンビナート。この“聖域”にどこまでメスを入れることができるのか。生き残りをかけた再編劇はこれから本番を迎える。
(二階堂 遼馬)

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