【産業天気図・ガラス・土石製品】建築、自動車、液晶、すべて後退でガラスは「雨」、セメントも「雨」が続く

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 08年10月~09年3月   09年4月~9月

ガラス業界の2008年度後半から09年度前半は、世界的な建築需要および自動車需要の減速が加速度的に進んでいるため、各社収益は前回(08年9月時点)予想の「曇り」から「雨」に変更する。セメント業界は主力となる国内向け販売が前期を下回ることから「雨」が続行する。ガラス、セメント各社は、08年4~9月期決算時点で大幅な減額修正をおこなった。09年度も続落か、回復しても小反発程度に止まる模様だ。

国内の建築用ガラスの不振は、不動産不況や景気後退により、建設需要が減っている事に起因する。原燃料高対応の価格転嫁も進まない。国内主力で07年度はガラス事業が赤字だったセントラル硝子<4044>は、加工拠点や営業拠点の縮小閉鎖、上期に4窯体制だったガラスフロート設備の3窯体制への移行などで、下期に20億円のコスト圧縮を行う予定でも08年度は赤字が継続する。09年度前半も需要が膨らまないかぎり、回復するは限定的になる見通しだ。

旭硝子<5201>や日本板硝子<5202>も、前期まで建築用ガラスが好況だった欧州市場の軟化が響く。さらに板ガラスのもう一つの柱である自動車用ガラスも日米欧の主要自動車メーカーが揃って深刻な販売不振に陥っていることから、売り上げが落ちている。

特に06年に英国ガラスメーカー、ピルキントン社を買収して業容を拡大した日本板硝子は、ピ社による欧州での収益比率が高いために、欧州景気後退の直撃を受ける。日本板硝子は、今09年3月期の営業利益見通しを従来の310億円から200億円(前期比57%減)に減額修正した。成長分野の太陽電池用ガラスは伸びているものの、まだ全体を牽引するには、ほど遠い。さらに日本板硝子は、欧州連合(EU)の欧州委員会から自動車用ガラスでカルテルを結んだとして制裁金支払いを命じられた。制裁金の引当額不足分などの特別損失が膨らみ、純利益は90億円(前期比前期比82.1%減)に沈む。

成長著しい液晶用ガラスを擁している旭硝子は、板ガラス主力の日本板硝子、セントラル硝子と様相が異なっていたはずだった。ところが変調の波は、旭硝子にも容赦なく押し寄せている。08年6月中間期営業利益は1096億円(前年同期比21.4%増)となり、期初会社計画の960億円を上回った。ところが夏以降、液晶パネルメーカーの減産が本格化して、通期営業利益2000億円の会社計画を1800億円(前期比8.8%減)に減額修正した。旭硝子は12月決算のため、他社に比べて景気後退の影響が比較的少なかったほうだ。だが、09年度(09年12月期)は、出だしから不況の直撃を受けるため営業利益続落を予想する。ディスプレー用ガラス専業の日本電気硝子<5214>も、今期営業益は横ばい、来期は減益の見通しだ。

セメント業界は、燃料となる石炭価格高騰に対して今春から夏にかけて値上げを精力的に推し進めた。ところが、国内建築需要の減少で肝心のセメント販売数量が大きく減っている。さらに石炭価格が夏場をピークに急上昇したことから、値上げだけでは賄いきれず太平洋セメント<5233>、住友大阪セメント<5232>とも、減額修正を行った。太平洋セメントは国内事業が赤字に陥り、営業利益は180億円(前期比65.1%減)で最終赤字転落の見込み。住友大阪セメントも営業益60億円(前期比49.7%減)と半減する。セメント各社は来4月に再値上げを打ち出しているが、セメント販売量が増えなければ、回復は小幅に止まりそうだ。
(鶴見 昌憲)

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