警備員が足りない!「2019年度問題」とは何か オリンピックのことを心配する前に…

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2019年~2020年にかけては世界の注目を集める重要イベントの多くが日本で開かれる予定。警察や警備関係者にとっては緊張の2年となりそうだ(撮影:今井康一)

東京オリンピック・パラリンピックが刻々と近づいている。オリンピックの規模は開催ごとに拡大しており、同時にセキュリティーにかかる費用もうなぎ登りだ。その理由は、言うまでもなく世界各地でテロが頻発しているからである。

過去には1972年のミュンヘン大会で選手村襲撃テロが、1996年のアトランタで爆弾テロが発生したほか、1988年のソウル大会の前年には、大会の妨害を狙って大韓航空機爆破事件が発生した。

2019年は年間を通して重要行事が多い

物理的な攻撃ばかりではない。近年オリンピックへのサイバー攻撃が、かなりの頻度で行われている。

2012年のロンドン大会では開会式当日、電力システムへのDDoS(分散型サービス拒否)攻撃が「40分間に1000万回」を数えるという異様な事態となった。2016年のリオデジャネイロ大会や2018年の平昌冬季大会でも、執拗かつ高度なサイバー攻撃が報告されている。いまやオリンピックは、テロリストにとって格好のターゲットになってしまったようだ。そこで気になるのが2020年に迫った東京大会である。

そこで今回は、セキュリティー分野専門家に、東京オリンピックで起こりうる危機について話を聞いたところ、テロ問題(情勢・対策)や危機管理の研究機関「公益財団法人公共政策調査会」の研究センター長・板橋功氏は、警察官など警備に従事する人の不足が引き起こす「2019年度問題」を懸念材料に挙げた。

同氏によると、「2019年度は国家的・国際的な行事が多い年。個々の行事は発表や報道がなされており秘密でも何でもないが、年間を通して行事が多いことが認識されていない」。

たとえば、4月30日には、「退位礼正殿の儀」が開かれ、5月1日新天皇の即位し、今上天皇の退位と新天皇の即位の儀式の儀礼が執り行われるほか、6月下旬には「G20サミット」(大阪)、9月20日~11月2日に「ラグビーワールドカップ」、10月22日には「即位礼正殿の儀」と「祝賀御列の儀」が開催される。警備警察にとってはまさに実践の連続だが、一息ついたと思ったら来年3月には聖火リレーが始まる。

警備面に限っていえば、ゆっくりとオリンピックの準備をしたり、訓練をしたりしている時間はない。準備や訓練は、あらかた2018年度中に終えておかなければならない状況だ。

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