変形型「パラ卓球台」がもたらした新しい発見 私達の視界の違いを実際に可視化してみると

拡大
縮小

この卓球台はリオデジャネイロ五輪で卓球台を提供した「株式会社 三英」とTBWA HAKUHODOが共同製作した。「いろいろな方々の協力で、急ピッチで作っていただけた」と、立石氏は感謝している。

三英は日本の卓球台のトップメーカー。現在、世界で主流になっているブルーの卓球台も、同社が卓球のイメージアップのためもあって1992年バルセロナ五輪でデビューさせている。

三浦慎社長は今回のパラ卓球台の取り組みについて「卓球台を通じてパラスポーツをもっと知っていただきたいと思った。協会のアイデアを具現化して、一般の方々に知ってもらい、体験してもらえるようにと考えました」という。

こだわったのは「形は違っても、五輪と同じ性能の台にする」ということ。素材も作りも同様。ただ、製造ラインには乗らないので、すべて手作りで約2カ月かけて作ったという。

「選手からビジュアルの希望を聞いたりしていて、われわれにもワクワク感がありました」という。天板が変形しているので、倒れないようにバランスをとる脚部などに工夫がされている。「説得力ある形になったと思います。ぜひ、みなさんに見ていただき、体験していただきたい。」と話した。

「見え方」の違いを気づくきっかけに

パラ卓球協会の立石氏は、パラ卓球台の今後の使い方について「パラスポーツの体験会や、小中学校など教育機関で使っていただきたいと思っています。もっと多くの人にも体験してもらえるように、たとえばショッピングモールとか、何かのイベントでも活用していただけたら」と話した。

パラ卓球台ができるまでの過程をまとめた動画が、12月10日からYouTubeで公開された。

PARA PINGPONG TABLE|カタチにとらわれない卓球台

今回は3種類の「パラ卓球台」だが、障がいによってさまざまな「見え方」があるのもわかる。「何かを感じていただくことに、モノとしての価値がある」と、製作した三浦社長。

健常者にとっては何かに気づくきっかけになるだろう。

赤坂 厚 スポーツライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT