旧カネボウにも投資する老舗ファンドが解散へ、信用収縮がダメ押し

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旧カネボウにも投資する老舗ファンドが解散へ、信用収縮がダメ押し

金融市場の混乱が続く中、企業買収を手掛けるファンドにも影響が及び始めた。

企業再生を手掛ける日系のプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)の老舗「MKSパートナーズ」(松木伸男社長)が、運営するファンドを来年いっぱいで解散する検討をしていることが明らかになった。同社は現在、国内と海外のファンド2本、合計約600億円を運営しているが、「金融機関からの借り入れ条件も厳しくなり、新規投資を実行する環境にない」として、ファンドに出資する投資家に対し、解散に向けた説明を始めた。MKS自体は存続するという。

同社は1982年の創業。アドバンテッジ・パートナーズ、ユニゾン・キャピタルと並び、日系PEファンド“御三家”の一角として草創期を担ってきた。ただ、ここ数年は社員の退職が相次ぎ、その動向は金融界で早くから注目されていた。

「ドーワワークスを最後に、だいぶ前から新規の投資を検討していなかった。マネージング・ディレクターが何人も抜けて、投資を実行できる体制になかったのではないか」と大手銀行の買収ファイナンス担当者は語る。実際、水面下で検討されていた投資案件に、買い手候補として最後まで残ることもなくなっていたという。

投資先の業績回復が芳しくないことも、ファンド解散の一因となった。産業再生機構の支援先でもあった衣料副資材大手の三景は、今年9月に伊藤忠商事に売却。価格は100億円超で、キャピタルロスになったもようだ。また、家電量販店のラオックスは、MKSが送り込んだ経営者の下での再建がうまくいかず、MKSが大株主としての持ち分を保持したまま、別の投資ファンド傘下で再建を目指す異例の形となった。

MKSが現在保有するのはクラシエホールディングスと福助、ドーワワークスの3社。福助は投資から約5年が経過し、昨年5月に豊田通商がMKS保有株を譲り受け、約23%保有の第2位株主となった。クラシエ、ドーワについても来年の解散までに条件面で折り合う買い手が現れるのかどうか。

「市場環境が落ち着けば、ファンドの資金集めを再開したい」というMKSの出口は、まだ見えそうにない。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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