深刻化する企業の資金繰り、日銀の異例の緊急支援で浮き彫りに


 図らずも、日本銀行の資金供給策が企業金融の深刻さを克明に浮かび上がらせた。

日銀は2日に臨時の政策決定会合を開き、企業金融円滑化を図る新たな措置を決定。金融市場に対する資金供給拡大を通じて、逼迫が著しい企業の資金繰りを緩和させることを目指している。

2009年4月末までの時限措置として打ち出した施策は二つ。市中銀行が日銀に差し入れる担保適格性の範囲拡大と、無担保翌日物コールレートと同水準の金利で年度末越えの「ターム物資金」を市中銀行へ供給する新たなオペレーションの導入だ。

金融市場で日銀から資金供給を受けるためには、市中銀行は相応の担保を日銀へ差し入れることが定められている。9日から実施される前者の措置は、その担保対象となる民間企業債務(社債や企業向け証書貸付債権)の適格要件のうち、格付けについて従来の「シングルA格相当以上」から「トリプルB格相当以上」に緩和する。

一方、後者の新たな供給オペレーションは09年1月中に開始。市中銀行が共通担保として日銀に差し入れている民間企業債務の担保価額の範囲内であれば、市中銀行は自在に無担保翌日物コールレートの政策誘導目標(現在は0・3%)と同水準の金利で「3カ月物」などターム物資金の供給を日銀から受けられる。

今回、日銀が新たな流動性供給に踏み切らざるをえなかったことは、企業金融が一段と厳しさを増していることを強く印象づけた。

銀行依存が急増

金融危機の本格化に伴って、この秋口から金融市場や企業金融分野では年末越え・年度末越えの資金調達事情は、例年になく深刻化することが予想されていた。日銀でもこの間、国債やCP(コマーシャルペーパー)の買い切り、あるいは現先方式の買いオペレーションによる資金供給を積極化させている。

ところが、積極的な資金供給を行ってきたものの、企業金融の逼迫度は改善されず、むしろ深刻化する一方といえる。

直接金融市場が機能不全に陥ったことで、資金調達で同市場に依存してきた大企業は、代替手段の「間接金融」つまり銀行借り入れへと殺到。この流れを受け、中堅・中小企業に銀行の与信能力が及ばなくなる“締め出し”ともいえる状態が際立っている。

そうした中、一般事業会社の間では資金繰り上の苦肉の算段が繰り広げられている。金融関係者によると、製造業などでは手形サイトの長期化で仕入れ決済の実質的な後ろ倒しを行い、自身の資金繰りを緩和させる動きが拡大。これで逆に代金回収が遅れることになった中堅商社や専門商社の財務が一段と逼迫する事態が広がっているという。

逼迫緩和には追加策も

今回、日銀が実施する一連の措置によって、事態はどこまで改善を見るのか。白川方明日銀総裁は2日、政策決定会合後の会見で、格付け要件緩和で「社債4500億円、企業向け証書貸付債権1・6兆円程度」、新オペレーションでは「3兆円程度」の資金供給拡大を見込むとした。

確かに、金融市場への資金供給が拡大することは間違いない。だが、そこから企業金融にまで資金が行き渡り、緩和効果が波及するかどうかは別問題。日銀の資金供給を受けた市中銀行が、企業向け与信を拡大しなければその効果が望めないからだ。多くの市中銀行では現在、自己資本比率の実質的な低下圧力に苦慮し、資産拡大(貸し出し増強)への制約が強まっている。中には、資産圧縮の必要性が増している銀行すらある。

つまり、金融市場での緩和効果が市中銀行を経由し、即座に企業金融の改善につながると楽観しにくいのが実情だ。日銀の流動性供給だけでなく、銀行による新たな与信手法の開発、監督官庁の与信促進に向けた制度的枠組みの変更といった「合わせ技」でも整わないかぎり、企業金融を脅かす信用収縮を打ち負かせそうもない。

(浪川 攻 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)

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