小沢新構想と「稀代の策士」三木武吉

小沢新構想と「稀代の策士」三木武吉

塩田潮

 古い話だが、54年前の1954年11月、与党の自由党からの離党組と野党の改進党、日本自由党とが合同して日本民主党が結成された。政界は少数与党となった自由党、第二党の日本民主党、それに社会党(当時は左右両派に分裂中)の三すくみ状態となる。日本民主党は両派社会党と共同で内閣不信任案を提出し、政権を打倒するが、事前に3党が約束したのが「4ヵ月以内の総選挙実施」であった。新登場の日本民主党内閣は約束どおり実行する。こうやって吉田茂内閣打倒、解散・総選挙断行を実現した。与党分断、超党派の「選挙管理・連立内閣」の絵を描き、大転換をやってのけたのは、「稀代の策士」と呼ばれた三木武吉・元日本民主党総務会長である。

 半世紀後、民主党の小沢代表が12月1日、求心力急低下が著しい麻生政権の早期崩壊を見越して「全党による超大連立の選挙管理内閣」を提唱していると報道された。それを見て、手本は三木武吉ではないかと思った。

 もちろん与党分断を狙った奇策と受け止める自民党がその手に乗るとは思えないが、反主流派や麻生失望組に離反を働きかけて浮き足立たせ、政権延命阻止と早期解散実現に結びつけるという狙いは、それなりに効果を発揮するかもしれない。民主党のマイナス材料は、「政局の小沢」が政権ほしさにまたもや大連立に乗り出したと見る国民が反発や不信を募らせる危険性がある点だ。その懸念を払拭しなければならない。「稀代の策士」の三木翁には「誠心誠意、嘘をつく」という言葉もあり、味方をも欺く策謀家だったが、国民には率直に本心を語ることが多かった。一方で、私欲を捨て、生命を賭して政権交代を図るという鬼のような執念を見せた。
 小沢代表の新構想が政治の大転換の起爆剤となるかどうかは、国民への誠実な説明と私欲のない鬼の執念という三木翁のような姿勢を持ち合わせているか否かにかかっている。
(写真:今井康一)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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