世界中で大流行する、マズくて高い寿司 失業中の若者は、ポーランドで寿司を握れ

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なぜ日本の寿司は美味しいか

さて、一国の特産品がその国だからこそ美味しいというのは、様々な産業クラスターの発達が影響している。例えば私は最近ローマに滞在していたわけだが、このピザ嫌いで知られる私が、連日パスタとピザを食べまくってしまった。

とにもかくにも美味しく、あの麺の味、固さ、ソース、新鮮な魚介、と何かにつけて美味しく、日本を含めた諸外国にも非常に美味しいパスタ屋さんはあるが、それでも最高級3つ星レストランのパスタよりよっぽど美味しいパスタがどこに行っても12ユーロくらいで食べられるのだ。

ちょっとばかしスーパーに足を延ばすと多様な種類のパスタが棚を埋め尽くしており、値段も格安だ。八百屋さんには赤々と輝く新鮮なトマト(中身が皮を破って飛び出してくるかの如く、鮮度抜群である)が安価で大量に陳列されている。

スペインでトマトをぶつけまくるお祭りがあるが、南欧はどこに言ってもトマトだらけである。この“当該料理”を美味しくするのに必要な原材料が高いクオリティで安価かつ豊富に存在する上、それらを調理できる人が国中にいるので美味しい作り方のベストプラクティスが国中に広まっているのである。

日本の寿司に当てはめるなら、まず海に囲まれており新鮮で多様な魚が比較的安価にどこでも入手できる。コメのクオリティは世界最高水準であり、過剰生産で余りまくるくらい美味しいコメが日本中で手に入る。寿司は国民食であり日本中どこにいっても寿司職人にこと欠かない。おまけにスシローなど全国チェーンも存在しており、国民の寿司に対する要求水準は価格的にも品質的にも世界最高峰であり、これら諸々の周辺インプット業界の発達が統合して美味しく安価な寿司を日本にもたらしているのだ。

よって、外国がどれだけ頑張ってもイタリア本場で食べるパスタの水準を超えられないのと同様、寿司にしても日本で食べるクオリティの寿司にはそれはそれは高い参入障壁が築かれているのである。

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