”年金破綻”は本当か--年金の誤解を解く! 未納者が増えると年金は破綻するのか、年金を税方式にすることは妥当なのか...年金の専門家・堀勝洋上智大学法学部教授が、年金にまつわる疑問・誤解に明快に答える。

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Q2.未納・未加入は年金制度を崩壊させるか?

 A.未納・未加入は、年金財政とリンクせず。

未納・未加入が年金制度を崩壊させるという意見がありますが、そうではありません。保険料を払っていない人は、その期間分将来年金を受け取ることができないので、将来の年金費用が減るからです。ただし、現在の保険料で現在の年金費用を賄う賦課方式の下では、未納・未加入者が増えれば、短期的には年金財政に影響を与えます。そのため、未納・未加入が増えることは、望ましくありません。また、未納・未加入は無年金者・低年金者を増やしますので、問題です。

未納者がどれだけいるかについては、大きな誤解が流布しています。よく「国民の4割が未納者」とマスメディアなどで言われることがありますが、これは極めてミスリードな表現です。数字で説明しましょう。

図のように、未加入者9万人と未納者308万人を合わせて、317万人が未納・未加入者です。ただ基礎年金の加入者には第1号被保険者だけでなく第2号(会社員など)、第3号(会社員の妻など)もおり、公的年金加入者は7012万人です。これに国民年金の第1号未加入者9万人を足した7021万人を分母にすると、5%弱が保険料を払っていないだけです。5%の未納で崩壊するというのは大げさです。

国民年金の第1号被保険者に占める未納・未加入者の割合が4割だといわれることがありますが、第1号被保険者2035万人に占める未納者・未加入者317万人の割合は約15・6%で、4割にはなりません。

保険料免除者が315万人いる、大学生あるいはフリーターで親元にいる納付猶予者が203万人いて、これに未納者を合計すると、835万人になり、第1号被保険者の4割にはなります。ただ、保険料免除者あるいは猶予者は、未納者と同一にはできません。免除には全額免除のほかに一部免除もあって、一部免除者は保険料を払っています。免除期間は、国庫負担により基礎年金が支給されます。また、免除者や猶予者には後から保険料を納付する(追納)の仕組みもあります。4割というのは誤解に基づく数字です。

未納者には低所得者も多いのですが、専門的職業に従事する高所得者もかなりいます。高所得者は自分たちには必要がないと感じているのでしょうが、年金制度の維持のために強制徴収すべきです。未納者は、実は自営業者より、臨時パートあるいは常用雇用のほうが多いのです。こうした人たちに、厚生年金あるいは共済年金を適用すれば、相当滞納は少なくなります。


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