交通事故の救命作業を速める最新技術の実情 自動分析・通報でドクターヘリも呼べる

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日本では2000年9月から緊急通報サービス「HELPNET」がすでに稼働している。事故や急病など万が一の際、エアバックの展開を検知して「自動通報」「ドライバーや同乗者の通報」「カーナビゲーションからの通報」のいずれかの手段をとることで、オペレーションセンター内に待機しているオペレーターとの会話によってサポートが受けられる。2018年9月末時点でユーザーは150万人を超えた。

意識不明となるような重大事故や、衝突によって気が動転している場合でも、オペレーターは車両から送られるGPSを活用した位置情報、車両の車体番号やボディカラー、さらには衝突の強さやシートベルトの装着有無情報などを把握して、消防や警察機関に対する救援機関などの救護に必要な情報をデータと音声で直接伝達し、速やかな出動要請を可能にしてきた。

より精密な事故状況の通報が可能に

D-Call NetはHELPNETで確立されてきた救護システムを礎に、さらなる救命率を向上させるために開発された仕組みだ。HELPNETでも使われてきた事故発生時のGPSデータを基にした車両位置情報やシートベルトの装着有無、衝突による衝撃の厳しさ(⊿V)になど加えて、事故発生から遡って車両位置情報のログを解析することで正確な事故発生現場(例/上り・下り車線のどちらか)を特定できるようになった。さらに、衝突の方向や多重衝突の有無の情報も加わり、事故発生時にはこれらの情報がすべてD-Call Netサーバーへと自動入力される。

自動入力された数々の情報は直ちに「死亡重症確率推定アルゴリズム」によって分析され、その結果、死亡重症の確率が高いと判断された場合には消防本部とドクターヘリ基地病院(ドクターヘリを有する病院)へと同時に出動要請が送られる。この時、消防本部への通報は音声/データ/ファクシミリなど共有しやすい複数の手段で行われ、同時にドクターヘリ基地病院に対しては早期治療に必要とされる事故データが送信される。この同時通報(同報)によって消防本部とドクターヘリ基地病院が円滑な連携を図れることもD-Call Netの特徴だ。

実際使われているドクターヘリ(筆者撮影)

前述した通りD-Call Netは2015年11月から試験運用を行ってきたわけだが、開始当初、9道県で10病院(ヘリ9機)であった協力病院は、本格運用を迎えた2018年6月15日現在では、31道県42病院(ヘリ37機)に増えている。これは全国で61を数えるドクターヘリ基地病院(基幹連携病院を含む)の約7割に相当するという。さらに全国約730カ所の全消防本部にD-Call Netによる車両の死亡重症確率データを伝達する体制も整備された。

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