《介護・医療危機》人材難、重度化対応に苦慮、特養ホームは火の車

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入院施設化する特養 医療体制は不十分

特養にとって、人材確保と並ぶ難題が、重度化する入所者への対応だ。厚労省は従来の申し込み順から介護度が重い人を優先して入所させるルールに転換。医療行為の必要な高齢者の積極的な受け入れを迫った。

そうした中で問われているのが、医療行為への対応だ。厚労省のルールでは、介護職員は簡単な傷の手当てなどを除き、医療行為ができない。その一方で医療の必要な入所者も増加している。しかし、特養には医師が常駐していないうえに、看護職員の配置も不十分(特に夜間は多くの施設で看護師が不在)。介護職員がやむなく医療行為を行っている施設も少なくない。

全国老人福祉施設協議会の調べによれば、たんの吸引を介護職員が行ったことのある特養は63%、胃ろう管理42%。こうした実態を踏まえ、全老施協は介護職による医療行為の規制緩和を求めている。

06年度改定で、厚労省は特養に看護師の手厚い配置を促した。「常勤看護師を配置し、24時間の連絡体制を確保。看取りの指針を策定して職員研修を行っている場合」に「重度化対応加算」(入所者1人につき1日10単位)を取得できるとした。

そして同加算の算定を条件に「看取り介護加算」も創設。「医師が回復の見込みがないと診断した高齢者について、医師、看護師、介護職員が共同して、本人や家族の同意を得ながら、看取り介護を行った場合に、死亡前30日にさかのぼって加算を得られる仕組み」も設けた。

要介護高齢者の生活の場だった特養は、退院患者の受け皿の役目を負わされようとしている。しかし、矛盾の解決を後回しにした誘導策への反発の声は根強い。「終(つい)の住処(すみか)」特養の混迷は深まる一方だ。

(週刊東洋経済)

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