《介護・医療危機》「究極の利用者本位」うたう小規模多機能ホームの苦闘

《介護・医療危機》「究極の利用者本位」うたう小規模多機能ホームの苦闘

国立社会保障・人口問題研究所によれば、2025年の日本では、75歳以上の高齢者の単独世帯および夫婦のみの世帯が743万世帯に達すると予測されている。団塊世代の高齢化により、05年の368万世帯から倍増する計算だ。

その際、介護度が重くなった高齢者を特別養護老人ホームなどの施設で受け入れようとすると、いくら施設を造っても足りない。それならば、住み慣れた地域社会で受け止めていくべき--。

そんな発想から、06年の介護保険法改正で生まれたのが「地域密着型サービス」。その代表例が「小規模多機能型居宅介護」だ。改造した一般の住宅などを拠点に、訪問介護、多機能ホームへの通い、ホームでの泊まりの3サービスで高齢者および家族を支える仕組みだ。政府の社会保障国民会議のシミュレーションでは、小規模多機能介護については現在の1日当たり1万~2万人程度の利用を、25年には60万人に増加させる必要があると書かれている。いわば、超高齢社会を乗り切るための切り札的存在なのである。厚生労働省には、小規模多機能介護を40万人ともいわれる特養ホーム待機者や療養病床の退院患者の受け皿にする思惑もあるようだ。

小規模多機能ホームを開設したのが、埼玉県新座市のNPO法人「暮らしネット・えん」(小島美里代表理事)。07年2月に民家を改装してオープン。現在、18人の高齢者が利用し、1日の通いは最多で12人、泊まりは5人まで。お年寄りは住み慣れたわが家を離れることなく、必要な介護を受けることができるのが最大のメリットだ。

介護報酬は定額払い 職員に過大な負担も

小規模多機能介護は「居宅サービスの理想型」ともいえる。通常の居宅サービスは、訪問介護、通所介護(デイサービス)、短期入所(ショートステイ)など縦割り型だが、小規模多機能介護はすべてを網羅している。そのため、「高齢者や家族の状況をしっかり把握できる。利用者や家族にとっては、サービスの柔軟性が最大のメリットだ」(小島氏)。グループホームと比べて、ひと月の利用費が少なくて済むのも魅力だ。

特筆されるのは、小規模多機能介護に関する介護報酬の仕組みだ。三つのサービスに関して、利用時間や回数に制限がない一方、介護報酬は要介護度に応じて一定額(包括払い)になっている。家族の帰宅が突発的に遅くなった場合に高齢者の帰宅時間を遅らせたり、家族の休日出勤や冠婚葬祭時にも緊急で預かってくれる。また、深夜に徘徊で自宅を飛び出した認知症の高齢者を、職員が家族と一緒に探し回ったりもする。

だが、利用計画に基づくので歯止めがあるとはいえ、定額報酬で利用頻度を問わない仕組みは職員に過大な負担を強いるおそれもある。高齢者は利用限度がないために在宅生活を送ることができる反面、職員の負担は重くなりがちだ。

基準の緩さも問題だ。小規模多機能介護では、ヘルパーは通常の訪問介護サービスと異なり、無資格でも可能だ。ほとんどの職員が非常勤でもいい。そのため、職員の質が低くなる懸念も持たれている。一方で、利用者が多い要介護2~3に関しては、グループホームと比べて介護報酬が低く設定されている。そうした中、赤字のホームが続出。早々と撤退した事業者も少なからずある。創設から3年目の現在、小規模多機能介護は早くも存続の岐路に立たされている。


(週刊東洋経済)
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