日本人が知らない「GAFA」包囲網が示す意味 データをめぐる戦いは安全保障問題でもある

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市場と個人データを独占し続けるGAFAに対し、国家による逆襲が開始されている。その中でも、(1)独占禁止法/競争法、(2)税制、(3)データ・プライバシー規制、という3種類の規制がGAFAを取り囲みつつある。

EU競争法によるGAFAへの規制は、比較的早くから行われていた。グーグルは2015年に初めてEU委員会から警告を受けた後、2017年6月に24億ユーロ(約3000億円)、今年7月に43億4000万ユーロ(約5700億円)の制裁金を課せられている。

また、GAFAは欧州各国においても巨額の収益を上げているが、域内に恒久的施設(PE)を置いていないとして、税金の支払いを免れていることが批判を浴びている。このため、イギリス政府は先月29日、GAFAをターゲットとして、売り上げの2%の税を課す「デジタル課税」を2020年にも導入する方針を打ち出した。

同様の規制はEUでも検討されていたが、低い税率を設定することによって企業誘致を図っているアイルランドやルクセンブルクがデジタル課税には反対しており、議論は錯綜していた。皮肉なことに、ブレグジットによってEUを離脱することになるイギリスが先行してデジタル課税を導入することとなった。

個人のデータは誰のものなのか

GAFA包囲網の中でも最も注目を集めるのは、今年5月25日に発効した欧州一般データ規則(GDPR)だ。GDPRは、EU加盟国に欧州3カ国を加えたEEA(欧州経済地域)域内に所在するすべての個人データに関する保護を強化する規制であり、同時に世界で最も厳しいプライバシー規制と言われる。

個人データのEEA域外への持ち出しは原則禁止であり、違反者には最高で世界売上高の4%もしくは2000万ユーロ(約26億円)もの制裁金が課されることとなる。そして重要なのは、EEA域内に拠点を持たない企業であっても、例えばインターネットを通じてEEA域内にサービスを展開していた場合には、域外適用が及ぶ点である。EEA域内の個人に対しては、削除を求めることができる権利(忘れられる権利)、他の事業者に移動することができる権利(データポータビリティー権)など大きく拡充された保護が与えられる点もGDPRの大きな特徴である。

そしてこのGDPRの影響を最も受けるのがGAFAである。なぜなら、彼らは世界で最も多くの個人データを保有することでビジネスを行っているからだ。検索エンジンやSNSを利用するとき、あなたは自分のプライバシーに関するデータまで譲り渡しているという認識はないかもしれない。

しかし、グーグルやフェイスブックは、自社のサービスを基本的に無償で提供することにより、利用者から膨大な量の個人データを収集・保存し、ユーザーの性別、年齢、住んでいる地域、職業、年収、趣味嗜好などを分析することによって、非常に精度の高いターゲット広告を販売することを可能にしている。グーグルとフェイスブックの2社による米国デジタル広告市場の占有率は、58.6%に達している(2017年)。

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