ソニー「アイボ」は次の飯のタネになれるか? 担当役員が語る「ベンチャー投資」の狙い

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ソニーの技術も、1社で独占するのではなく、いろいろな企業に使ってもらったほうが価値上がるだろう。これに該当するのがAI・ロボティクス事業だ。

ソニーでは今、犬型ロボットの「アイボ」や医療用ロボットなどを作っているが、規模拡大させるのは大変だ。多様なベンチャー企業と手を組むことで、ソニーの作る(AI・ロボティクスの)プラットフォームを構築していきたい。

――ソニーの作るプラットフォームとは何でしょうか?

1つの例が、今年4月から始まった、ソニーとアメリカのカーネギーメロン大学が共同で行うAI・ロボティクス関連の研究開発だ。

11月6日にソニーからの資金調達を発表した英ベンチャー「what3words」。音声入力により、住所を3つの簡単な言葉で表現できるのが特徴。ちなみに、東洋経済新報社の本社ビルの住所は「どにち・ゆれる・しみこむ」(記者撮影)

最初の研究テーマは「調理とデリバリー」だ。何もソニーが食産業に参入することが目的ではない。

調理の流れには、客からオーダーを取るためには音声認識、音声合成技術でコミュニケーションを取ることが必要だし、実際に食材を切ったり焼いたりするのはロボティクス技術が使われ、できたものをテーブルに運ぶのにはモビリティの技術が必要だ。

つまり、一連の流れを構築できれば、そこで作った技術を幅広いビジネスへ落とし込める可能性がある。とはいえ、(AI・ロボティクス領域で)規模の小さなソニーが(グーグルやアマゾンのような)巨大な企業に勝てる見込みはない。ソニーの作る基盤へ、多様な技術を持つ外部のプレーヤーに参画してもらう必要がある。

ソニーにはブランド価値がある

――投資先に、創立初期段階のベンチャーが多いのも、ソニーのプラットフォームに組み込める余地が大きいからでしょうか。

現時点ではそうだ。事業の方向性がまだ固まっていないベンチャーの育成にかかわることで得られる知見もある。ただ、われわれのプラットフォームが成熟してきたら、そこにうまくはめ込めるレイター(成熟した)のベンチャーへの投資があったとしても違和感はない。

――他方で、ベンチャー企業がソニーからの資金調達を受けることのメリットとは何でしょうか。

ソニーはまだ、ブランドとしての価値がある。ファンドの設立から3年で、1000社近くのベンチャーを見てきたが、「ソニーがベンチャーキャピタルをやる」というと、向こうから提案が来る。出資額を考えれば、ソニーよりグーグルやソフトバンクグループのほうが何倍も資金力があるわけで、お金以外に「企業に箔が付く」ことが、さらなる資金調達につながるという期待があるということだ。

ソニーが展開する事業の幅広さも魅力のはずだ。当社は部品から完成品まで、ハードからコンテンツまで手掛けているので、ベンチャー企業にとっては、単一業態の企業と手を組むよりも、自社の技術を活用できる間口が広い。われわれの仕事は、案件ごとに相手の期待値がどこにあるのかを見極め、売り込むことだ。

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