中国人の大半は、実は自国に失望している! 愛国を叫ぶ者は、共産党の一部だけ

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結局のところ、突き詰めると、所有の問題に突き当たる。中国には、自分の資産を守ってくれる法律が少なく、ほとんどすべては国家の所有になっているのだ。中国人が世界の土地を買い占めたり、カジノで大博打をする理由も、そこにある。本当に安心できる国家があるなら、何も母国を捨てたり、無駄におカネを使ったりはしない。

自国に失望、西欧を脱出口にする中国人

中国の「借り物の民主主義」に失望した国民は、中国で金儲けをして、西側に移住し、そこで民主主義を楽しみたい。この発想は、今や中国人の常識である。

一般の日本人にこの感覚は理解できないだろう。だが、実は、中国と付き合っている日本人商社マンにも、「中国は金儲けの場所、住む場所ではない」と考える人は多い。なぜ「そういう場」だと考えるようになるのだろうか。

おそらく、今の中国には理想主義が育ちにくい土壌があるのだ。実は過去から蓄積した文化や文明はものすごいはずなのだが、今の中国にはあまり残っていない。自然破壊を続けてきた結果、はげ山しか残っていないように、である。

現代中国の実質的歴史は、1949年からの60年ちょっとしかないのだが、この間、共産主義革命と文化大革命は、中国のあらゆる信仰・原則・道徳を壊し去った。その結果、現在の中国は、物質と金銭でしか計れないような、浅ましい文化が形成されたのではないか。

中国のエリートや官僚の多くは、接待・会食・飲み会で身体を壊すまで浪費を続けている。自分ではわかっていても麻薬のように繰り返し、ひたすら毎日を過ごしている、そんな国家なのだ。彼らは、心が貧困であることは、むろんわかってはいる。だが辞められないのが実態である。「いつ今の体制が消えてなくなるのか」を考えてしまうと、現世利益に身を任せるか、資産を隠して海外に高飛びするかしか選択肢は残っていないのだ。

必要以上の接待や会食は、単なる見栄ではなく、単に「組織や国家なら、浪費をしても問題はない」と考えているだけなのだ。私は、ひと昔前は中国の官僚の給料が少ないからそうなったのかと思っていたが、どうやら今の中国は、国家規模で欲望に振り回されているように見える。

長く続いてきた貧困な社会主義体制は残ったままで、中国は今国をあげてぜいたくざんまいになった。「貧乏性の裏返し」が浪費社会だから、社会主義社会では浪費は避けられない。だから、官僚の給料を値上げしたところで、悪癖が劇的に改善されることは、まずないだろう。今の中国が難しい事態に直面していることは間違いない。

中村 繁夫 アドバンストマテリアルジャパン社長

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なかむら しげお / Shigeo Nakamura

レアメタル(希少金属)の専門商社「アドバンスト・マテリアル・ジャパン代表取締役社長。中堅商社・蝶理(現東レグループ)でレアメタルの輸入買い付けを30年間担当。2004年に日本初のレアメタル専門商社を設立。著書に『レアメタルハンター・中村繁夫のあなたの仕事を成功に導く「山師の兵法AtoZ」』(ウェッジ)、『レアメタル・パニック』(光文社ペーパーバックス)、『レアメタル超入門』(幻冬舎新書)などがある。

 

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