瀬戸際に立つ中国経済、景気後退が「和諧社会」を揺るがす


民主党参議院議員・藤末健三

 国際通貨基金(IMF)は11月に、2008年の世界経済成長率を0.2%ポイント下方修正し3.75%とした。また2009年の経済成長率は、0.8%下方修正し2.2%とした。とくに先進国の2009年成長率は、「戦後初めてのマイナス成長」であるマイナス0.3%の予測となった。これは、2001年にITバブルが崩壊したときでさえ先進国の経済成長率はプラス1.2%であったのと比べるとどれだけ傷が大きいことがわかる。

一方、中国経済はどうか?

IMFが10月に発表した統計では、中国経済の成長率について、やや減速はするものの、2008年は9.7%、2009年は9.3%と、他国と比べ高い成長率を維持するとしていた。11月には、09年の9.3%の予測は8.5%に修正されているが、それでも主要国のうち最高の成長率となっている。

大丈夫か? 中国経済

確かに他国と比較して中国の実質GDP成長率の予測は8.5%と高い。

しかしながら、今まで5年連続で2ケタ成長を達成しており、2007年は11.9%に達したことを考えると「成長率が一気に今年2.2ポイント減少、来年には引き続き1.2ポイントの減少」となる。この変化は中国経済に大きなインパクトを与えるのではないだろうか。

中国の名目GDP の43%(2007年)は製造業が占めている。10月の工業生産は前年比8.2%増と7年ぶりの1ケタ成長となっている。また、製造業購買担当者指数(PMI:製造業景況指数)は、10 月で44.6(50 以上が景気拡大、未満が後退)と2005 年の発表数値以来過去最低となっている。

ちなみに、中国国家統計局の発表(8月)によると、中国経済の輸出依存度は2007年で37.5%を上回っている。製品の消費地である欧米は来年度も消費が落ち込む可能性が高いと思われる。実際に筆者は夏に上海政府幹部と話をしたが、オリンピックが始まる前であったにもかかわらず、すでに輸出の成長率は落ち始めていた。

経済政策を転換した中国政府

このような状況の中、金融政策の舵を切り始めている。

今年、9月17日には6年7カ月ぶりとなる金利引下げを行い、その後10月には2度の金利引き下げを行い、そして11月27日には4回目の引き下げを行った。これで一気に4年前の金利レベルに戻ってしまった。

これは、今までの景気過熱を警戒する政策ではなく、インフレを抑制しつつ、成長を維持する「一保一控政策」へと転換といわれる。

また、財政政策でも、中国政府は 11 月9日に「2010年までに4兆元(57兆円)を投ずる景気対策」を公表している。

しかしながら、この景気刺激策は「第11次五カ年規画(2006~10年)で策定済みの範囲内である」との指摘や毎年11、12月に「中央経済工作会議」で議論される経済政策の前倒発表ではないかとの見方もある。

大丈夫か「和諧社会」

筆者の個人的な見方であるが、この中国の成長率の低下は、雇用や低所得層に大きな影響を与えるのではないかと心配している。雇用に関するPMIも10月には47.0 と50を切り、完全に悪化している。日本でも多く報じられているが、とくに繊維や玩具などの業界が大量解雇を始めているようだ。

あまり知られていないが、中国の家計消費支出の対GDP比率は、たった35.5%に過ぎない。きわめて労働分配率が低いのだ。そのうえ、医療、教育などでの個人負担は非常に重い。そのため消費性向は年々低下している。

社会保障制度はまったく整備が遅れている。2007 年における都市部労働者でさえも、年金保険加入率が52%、雇用、医療、労災の各保険はいずれも40%台にとどまっているのでる。社会保障制度が未整備なままで、大量の失業者が発生したときに政治的な安定を維持できるのか? この景気後退が胡錦濤の唱える「和諧社会」に与えるインパクトは大きいだろう。

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