KDDIは「官邸からの宿題」を本当に果たしたか 楽天と提携でクリア?菅発言前の値下げ強調

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髙橋社長は「プランを始めた昨年の夏から今年度末までで、3000億円超のモバイル収入が下がる。ドコモの4000億円と同じではないが、われわれもすでにそこまで下がっている」と述べた。そのうえで、「ドコモは分離プランの最終ランナーで、我々はファーストランナーだ」と、現在地の違いを強調した。

また収益への影響について髙橋社長は、「(様々な施策や努力の結果によって足元でも)モバイル減収分の3000億円は打ち返している」と説明し、「いま中期経営計画を作っているが、ドコモのように最初から減益計画にするつもりはない」とまで言い切った。

髙橋社長は「分離プランではわれわれがファーストランナー」と語った(記者撮影)

だが、KDDIのモバイル減収額の3000億円と、ドコモの利用者還元額4000億円とを並べて語ることはおかしな話だ。

KDDIの3000億円は、分離プランの推進で通信料金を下げた分や、その他のキャンペーンを含めた減収額分だ。そこには通信料を下げる代わりに、利用者の端末代金を値引くのをやめた分(利用者からすれば負担増分、KDDIからすればコスト減となり増収分)はまったく加味されていない。つまり、KDDIの実際の利用者への還元額は、3000億円よりもかなり少ないとみるべきだろう。

一方、ドコモの4000億円は、通信料金を下げる分と、端末代の値引きをやめる分を合わせた還元額だ。もちろん、ドコモとKDDIでは、料金見直しの時期も元のプラン内容も異なる。現状ではドコモの新料金の詳細は不明で、単純比較はできない。それでも、ドコモの方が明らかに還元額は多く、値下げ率が大きいように見える。

そのドコモを引き合いに出して「うちは宿題をすでにこなした」と強弁する説明は、不可思議だ。そもそも、菅氏が携帯各社の通信料金や、巨額の利益に対して苦言を呈したのは、今年8月以降。KDDIの分離プランはその発言の1年も前に始めた話で、時間軸からいってもおかしい。

官邸や政府が望む、新規参入者・楽天とのローミング契約が「特別ポイント」として評価でもされない限り、KDDIはドコモが逃れられなかった、「菅氏の携帯各社への怒り」をかわせることにはならない、と見るのが自然だろう。

避けられない業界での連鎖反応

ドコモの料金見直し発表の翌日になったKDDIの決算会見当日は、ドコモの株価が前日比で14.7%下落したのに対し、KDDIの株価はそれ以上の16.1%下落した。KDDIは現状、通信事業への依存度が高いため、市場からはドコモへの追随による減収の可能性が懸念されたとみられる。

官邸の意向は別にしても、業界最大手のドコモが料金見直しで利用者の実質負担(通信料金と端末代金を合わせた合計額)を大きく下げれば、KDDIも影響は避けられそうにない。逆にKDDIが何もしなければ、顧客を奪われることになりかねない。

菅氏の「4割発言」後、業界では最初の大きな値下げ発表となったドコモの新料金は今後、KDDIやソフトバンク、更にはMVNOまでも巻き込む値下げの連鎖反応を引き起こすのか。その引き金になる可能性は、十分にありそうだ。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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