(最終回)新規事業立ち上げのプロセス(後編)

(最終回)新規事業立ち上げのプロセス(後編)

坂本桂一

 前回に続き、新規事業立ち上げのプロセスの一部と考慮すべきポイントを説明します。
※前回で、「1.目的を決める」「2.事業テーマを決める」「3.ビジネスプランの策定」について説明しています
4.事業化の可否の決定
 どのビジネスを選び実行に移すかについては、評価者がビジネスプランとP/L(損益計算書)を精査したうえで決定します。初期段階ではやるべきものを絞り込むというより、やる必要のないものを削るというぐらいの感覚のほうがいいでしょう。
 そして、評価者には本来、新規事業立ち上げを複数経験し、そのノウハウを持った人物が含まれていることが望ましいと考えます。自社内にいない場合も、選定部分については外部の有識者をアサインすることも検討すべきです。
 とはいえ、なかなかそういったことができない場合にでも、次善の策として合理的にビジネスを選び出す方法はあります。それが、成功率を高めるための選定基準の設定です。
 下記は、その中でも特に、どの企業でも使える汎用的なものの例になります。
(1)何のために自社が新規事業に進出するか、その目的に合致している
 これは、最も重視すべき判断基準となります。高い付加価値の獲得を新規事業の目的としながら、売上規模が見込めるからといって薄利多売型のビジネスに参入することは、例え事業チャンスがあったとしても本来は行なうべきではありません(もしくは、自社で複数のリソースが割けるなら、本来の目的と合致した新規事業と並行して、別の事業体として行なっていくべきです)
(2)自社に合ったビジネスか
 自社の企業理念や企業ブランドなどの視点、既存ビジネスとの距離の視点、勤務形態や風土等における自社社員との適合度などの視点より検討しましょう。一般に、企業が新規事業に乗り出す際は、既存事業に業種や顧客、ビジネスモデル等が近いところで行う方が成功確率が高いと思われます。それは、従事者のモチベーションや、組織や個人に蓄えられた形式知、暗黙知が好影響を与えているからだと思われます。
(3)そのビジネスをスタートするリソースが自社内外で調達できるか
 モノ・カネ以外に、ヒト(スキル、モチベーション、ハングリーさなど)の視点でも必要なリソースを検討してみてください。例えば、金融系企業の新規事業としてファーストフード店をやろうとしても、人材を確保するのは難しいでしょう。
(4)失敗しても本業の屋台骨までは傾かないか
 新規事業は、ほとんどの場合失敗に終わります。ですから、ひとつの事業で本業に影響を与えるほど資金負担がかかる事業は、リスクが大き過ぎるのでやるべきではないでしょう。逆に、一度決定した資金計画は、短期的な業績に左右されること無く、計画期間内において維持継承されるようにしておくことも重要です。
(5)本業の手助けになるだけの成長スピードがあるか
 新規事業が黒字化し、社会的な評価も得られそうであっても、たとえば、5年間かかって年商50億円にしかならないのであれば、年商数千億円の親会社にとっては、本業の手助けになりませんからやらないほうがいいでしょう。また、もしそうしたビジネスが社内に存在しているなら、撤退も検討すべきです。社内の優秀な人材を、もっと可能性の高いビジネスに投入した方がよいでしょう。
(6)進出するマーケットは成長しているか
 そもそも成功確率の低い新規事業において、マーケット自体が拡大しているところに参入することは、成功確率を高めると同時に、成功した場合の成長スピードを加速させる重要なファクターです。進出するなら、成長している業界、成熟した市場の中においても成長しているニッチセグメントなどのほうが無難だといえるでしょう。
(7)参入障壁が低過ぎないか
 ホルモン鍋屋やダイヤルQ2のような誰でも簡単にはじめられる事業は、器用でフットワークの軽いインディペンデント・ベンチャー向きです。企業内起業の場合は、ある程度資金を必要としたり、努力しないと参入できないマーケットで勝負するほうが、最終的に成功する確率は高いでしょう。また、成功した場合、長期にわたりその恩恵にあずかることができます。
(8)付加価値の高いビジネスか
 私は学生のときに、コピー機を並べてコピーサービスする店を多店舗展開する、というビジネスをやっていました。しかし、そういう付加価値が高いとはいえないビジネスは、すぐに過当競争にさらされるので、企業の新規事業としては避けたほうがよいでしょう。
(9)誇りを持ってできるビジネスか
 私は以前、ちり紙交換をやって、そこで多くのことを学びました。ですが、昨日までネクタイを締めて仕事をしていた人が、今日からちり紙交換をやれといわれても、モチベーションが上がらないでしょう。
企業がやるビジネスとしては、プライドをある程度満足させてくれるという要件は重要です。
(10)全員が「炎の集団」でなくても成功できるか
 かかわる50人全員が高いモチベーションを要求されるビジネスは、企業がやるビジネスとしては適当ではありません。モチベーションが高い人は5人いれば十分で、あとの45人にはむしろ、与えられた役割をきちんとこなす働き方をしてもらったほうがいいというビジネスモデルを選んだ方が成功の可能性は高いでしょう。
 事業化の可否は社内に選考委員会を作り、そこを通過したものを取締役会にかけて決定とします。ただし、事実上の最終判断は選考委員会の決定ということにして、取締役会は基本的に、選考委員会の決定に異議を唱えないこととしておくほうがいいでしょう。

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