初版が1万ドル!『キングコング』の濃い世界 1930年代、特撮映画は日本の禅僧をも魅了した

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最後に、稀珍快著ではなく「稀珍怪映」になってしまうが、キングコングのパロディ映画もかなりイカした、いやイカれた珍なるものがあるので駆け足でそれらを紹介する。

オリジナルが封切られた年の9月には早くも日本で『和製キングコング』なる映画が製作されたそうだが、更に4年後の1937年には、前回紹介した小説界の「和製キングコング」である『恋山彦』が映画化されている。翌1938年には『江戸に現れたキングコング』なる作品まで封切られている。

B級映画の雄『レディーコング』『コングキングの逆襲』

更には、1976年の第二『キングコング』の直後に製作されたものの、ご本家を超える傑作であったがゆえに、強引に封印されてしまった幻の作品であると自称する『レディーコング』は、自信満々の触れ込みの割には、自分の庭で撮影したかのような悪夢的チープさが全編に漲る、絵に描いたようなB級映画の雄であった。コングを倒すためにジェット機が3機飛び立ったのだが、到着したシーンではヘリ2機だった、という脱力っぷりが逆に見どころといえるだろう。

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コングキングの逆襲

そして極めつけは『キング・カンフー/コングキングの逆襲(原題KING KUNG FU)』である。

ヒロインの名前が、初代アン・ダロウ役を演じた女優フェイ・レイをもじったレイ・フェイであるところからして、オマージュ臭とバカ臭が漂っていてグッド。ほぼ人間と同じサイズ(それだと、キングというよりはむしろ本物のゴリラよりちょっと小さいのだが・・・・)のキングコングが、中国で拳法の修業をしていたが、誰よりも強くなってしまったために追放されてアメリカに辿り着く。

 そこからグダグダな展開で騒動が発生し、最後は美女を抱えたキングコングが、エンパイアステートビルならぬどこにでもあるチェーンホテルのホリデイインの 屋上でヘリコプターと対決・・・とストーリーのバカバカしさに思わず「ブラボー!」と叫びたくなる怪作である。

といった訳で、キングコングの存在は、今なお古本の世界でも、映画の世界でも巨大なインパクトを与え続けているのである。

古書山 たかし 古書蒐集家

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こしょやま たかし / Takashi Koshoyama

書籍、レコードなどの稀少な出版物を蒐集しているうちに、家の中は資料の山。その整理をめぐって家族との論争が絶えないのだが、それでも蒐集の手を緩めることはない、情熱の人。出張の折などには、古書店めぐりを欠かさない。「古書山たかし」は、もちろんペンネーム。実は会社四季報にもその名前が掲載されている上場企業の経営者だが、その正体はヒ・ミ・ツ。もちろん社業を軸に据えているので株主の皆様、ご安心ください。

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