《若手記者・スタンフォード留学記 15》最新メディア事情。新聞は壊滅。でも、雑誌は頑張っている


 最近、ひょっとしたことから、アメリカの雑誌事情について聞かれる機会がありました。私は、この分野の専門家ではないのですが、ちょうど良いチャンスなので、アメリカの雑誌市場について少しばかり調べてみました。

第11回「アメリカで考える、日本の雑誌とジャーナリストのこれから」では、アメリカの雑誌の記事の内容に焦点を当てましたが、今回は、ビジネス面について語りたいと思います。

まず、市場全体をみてみましょう。

米国の雑誌の販売部数は、ITバブル期の2000年に比べると、07年時点では約2.4%落ちています(グラフ1参照 出所:Magazine Publishers of America)。ただ、この落ち込みは、毎年約2%ずつ部数が低下している新聞業界に比べれば、大したものではありません。たとえば、全米第4位の部数を誇るロサンゼルスタイムズは、2000年に約110万部だった部数が、今年9月には、73.9万部まで急降下しています。それと合わせて、ピーク時に1300人ほどに達した従業員数は、ほぼ半分にまで削減されたそうです。

では、広告収入はどうでしょうか。

Magazine Publishers of Americaのデータによると、アメリカにおける雑誌全体の収入のうち、その71.9%(2007年)が広告によるものです。2007年の広告収入を見ると、2000年当時よりも、4割以上も増えています(表2参照)。ITバブル崩壊後の01年は減少したものの、それ以降は快調に数字を伸ばしています。

好調の背景には、好景気による広告市場全体の底上げもあるでしょうが、雑誌広告の広告全体に占めるシェアも上がっていますから(01年の17%から07年は19%に成長)、好景気だけが理由ではなさそうです。

過去8年の雑誌業界を総括すると、「販売部数は横ばいだけれども、広告収入は順調に増加」というところで、衰退産業とはいえません。むろん今年は、金融危機の影響で、部数、広告ともに落ち込むでしょうが、マイナス成長は雑誌業界に限った話ではありません。

部数が倍増した「エコノミスト」、収入が半減した「ビジネスウィーク」

 市場全体を眺めるだけでは、いまいち現実感がありませんので、次に、個別の雑誌のデータを見てみましょう。2000年と07年の間における、主要雑誌の販売部数、広告収入、そして、合計収入(雑誌販売+広告)の推移を3つの表にまとめてみました。

俗に、米国では、「USニュース」「タイム」「ニューズウィーク」の3誌が"ビッグ3"と呼ばれます。ビッグ3の過去8年を分析すると、「タイム」の不振が際立っています。

06年から07年にかけて、「タイム」の部数は実に70万部も下落し、広告収入も約2割減少しています。ただし、この大幅な部数減にはそれなりの理由があります。これまで、「タイム」も他の雑誌と同じように、部数をカサ上げするために、病院や床屋などに雑誌を無料で配っていました。しかし、今回、それを一気に廃止したのです。無料で雑誌を配るのは高いコストがかかるうえ、定期購読者の増加や広告効果という点でもメリットは薄い、と判断したからです。

 しかし、発行部数が減少すると、広告料金に響いてきます。そこで、タイムは今、新しい広告料金の算定方法を広告主に提案しているそうです。それは、「発行された部数(337万部)」ではなく、「回し読みも含めて、実際に雑誌を読んだ人の数(1950万人)」を広告料金のベースにするというものです。

さらに、定期購読者のうち、裕福な読者を80万人抽出し、彼らにだけ月に一度、ライフスタイル・旅行・娯楽に関する特集記事を提供することによって、良質な広告主の気を引こうとしています。(参考:The New York Times, August 14th 2007, "Celebrity Magazines Gain, but Not Industry Circulation)

回し読みを含めた読者が、どこまで正確に測れるのかはわかりませんが、なかなか面白い試みです。

次に、ビジネス誌はどうでしょうか?

一言で言うと、「エコノミスト」の一人勝ちです。

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