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マツダ「最も美しいコンセプトカー」の全貌 マツダ

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大きくえぐるようにデザインされたサイドボディに映し出される、光と影。
その鮮やかなコントラストは躍動する生命体のようだ

アート写真とのコラボで輝きを増すデザイン

東京ミッドタウンの開業以来、毎年秋に開催されている「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」。国内外で注目されるデザインが集結するこのイベントに、今年は異色のコラボレーションが登場した。

そのコラボレーションとは、「マツダ VISION COUPE(ビジョン・クーペ)」と、ファッション雑誌「ITALIA」選りすぐりのフォトグラファーによるアート写真13点を組み合わせた展示だ。

「マツダ VISION COUPE」は、2017年に発表されたマツダの次世代コンセプトカーで、その美しいデザインから、18年フランスのパリで開催された「第33回Festival Automobile International(国際自動車フェスティバル)」では「Most Beautiful Concept Car of the Year(世界で最も美しいコンセプトカーオブザイヤー)賞」にも選出されている。

クルマとアート。一見かけ離れた二つのジャンルがなぜ出会ったのか。マツダの常務執行役員でデザイン・ブランドスタイル担当の前田育男氏は次のように経緯を説明する。

マツダ 常務執行役員 
デザイン・ブランドスタイル担当 
前田育男

「18年5月に、イタリア・コモ湖で開催された『Concorso d’Eleganza Villa d’Este(コンクール・ド・エレガンス・ヴィラデステ)』に出展した際、『ITALIA』が、大きな興味を寄せてくれました。すぐに意気投合して、一緒に何かをやろうという話になり、ミラノでクルマとアートを融合するイベントを開催したのです」

(※1929年から開催されている伝統と格式ある自動車イベント。一年に一度、世界中のコレクターが所有する貴重なクラシックカーや、自動車メーカーやデザイン会社によるコンセプトカーが一堂に会し、そのエレガントさを競う)

現地で大きな話題を呼んだそのイベントを、東京で再構築したのが今回の展示だ。テーマは「モノに命を吹き込む」。マツダのデザイン哲学である「魂動」という「クルマに命を与える」コンセプトと、「明確なアート志向を持つフォトグラファーは、写真に命を吹き込む」と考える「ITALIA」の思想が共鳴した展示となっている。3D測定器でも再現できないとされる美しい曲線を持つ「マツダ VISION COUPE」のボディに、瑞々しい感性を放つアート写真が映り込むことで生まれる多様な色彩は、見るものを魅了してやまない。

「ITALIA」のゲストエディターを務めるアーカイブフォトディレクター、マイケル・ヴァン・ホーン氏も来日

自動車産業の新潮流に一石を投じた理由

一つのアート作品にまで昇華した感のある「マツダ VISION COUPE」だが、このようなコンセプトカーが誕生した背景には、自動車産業で急速に進んでいる「CASE」に対する危惧がある。「CASE」とは、コネクティビティ(接続性)、オートノマス(自動運転)、シェアード(共有)、エレクトリック(電動化)の頭文字をとった造語だ。

「自動車の歴史上、最大のターニングポイントを迎えている」と話す前田氏は、「CASE」がクルマの価値が変質させるのではないか、と指摘する。

「便利で快適であるのは素晴らしいことです。しかし、それだけを追求してしまうとすべての車が似たり寄ったりになり、どんなデザインのクルマでも良いということになりかねません。クルマに対して抱いてきたある種のリスペクトがなくなってしまう可能性すらあるでしょう。そうなると、カテゴリー別に1種類ずつあればいいじゃないかという声だって上がってくるかもしれません」

つまり、クルマの画一化が進むというわけだ。すでにその兆候は現れはじめていると前田氏は話す。

「地球環境に対する配慮や安全性の確保といった社会的責任を果たすのは、自動車メーカーとしての使命です。そのための技術革新は今後も欠かせません。しかし、環境性能や安全性の追求が、デザインに直結しすぎるあまり、無味乾燥な形のクルマがあまりにも増えてきていると思うのです」

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