アマゾンが狙う「クラウド世界王者」の座 スタートアップも、大企業も、公共セクターも顧客に

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新サービスを続々と発表

基調講演でAWSのシニアバイスプレジデント、アンディ・ジャシー氏は、競合他社(IBMを挙げていた)のプライベートクラウドに対するAWSの優位性を示すだけでなく、数多くの新しい機能を発表し、AWSに順次追加した。

その中で意外性を持って受け入れられたのは、デスクトップ仮想化環境「Amazon WorkSpaces」だ。デスクトップの仮想化は、実行環境を整えたり、より強力な処理能力を生かしたり、リソースを共有したりするうえで重要だが、多様なモバイルデバイスが利用される環境において、その重要性を高めている。

Amazon WorkSpacesは、iPhoneやiPad、アンドロイドなどのモバイルデバイスからも、アプリを介して利用することができる環境を提供する。同様の環境を整える際に障害となっていたのはコストだったが、35~70ドルの月額料金が設定され、「既存のソリューションの半額以下」と指摘していた。

同じく初日に披露された「Amazon AppStream」は、HDの画質のビデオやゲームをストリーミングし、ウェブやモバイルなどのデバイスに配信することができる仕組みだ。デバイス側の処理を行うのではなく、サーバー側でグラフィックスのレンダリングを行い、どんな環境に対しても高品質の映像体験を提供できる仕組みだ。

これら2つの技術はあまり関係なさそうに見えるが、AWSのクラウドとしての処理能力が向上したことを背景に、どんなデバイスからでもパワフルな処理性能を活用できるようにする環境を実現している点で共通している。このほかにも、これまで以上に強力な処理性能を提供するインスタンスを用意し、手元に高価なワークステーションを置くよりもパフォーマンスやコストの面で有利になる環境を提供している。

グラフィックス処理にAWSを利用する例として、映画「Star Trek Into Darkness」の3Dエフェクトを担当したAtomic Fictionのデモが披露され、グラフィックスのレンダリングをAWSで行い、1000台分のサーバの処理能力を1時間利用して仕上げることができたと説明した。

新しいクラウド活用の方法を、次々に提案するAWSは、テクノロジースタートアップ以外の業種からも、「使わない理由がない」という声が上がりそうだが、まさにAWSが狙っているのはそういう状況を作り出すことなのだ、とイベントに参加して明確に理解することができた。

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