ピリピリムードの中堅薬局チェーン、揺れる「自主独立」の気風

ピリピリムードの中堅薬局チェーン、揺れる「自主独立」の気風

業界の“老舗”がまた一つ、大手に身を委ねた。

茨城県つくば市。東京から特急電車で約45分、緑深い学園都市に、1971年創業の寺島薬局の本社がある。「ここでドラッグストアといえば寺島ですよ」との言葉どおり、地元ではおなじみの存在だ。その寺島が、今年10月、同業大手グローウェルホールディングス傘下のウエルシア関東に身売りを決めた。「決断するのはつらかったが、もう創業者の思いだけでやっていける環境ではなくなった」。創業者の息子である寺島孝雄社長は胸の内を吐露する。

今やただならぬ緊張感が漂うドラッグストア業界。「そういう話はちょっと勘弁して」。取材依頼への相次ぐ拒否。寺島の孝雄社長でさえも写真撮影はNG。某中堅ストア関係者が内情を明かす。「今はどこもピリピリしている。買収の話がない中堅なんてないんじゃないの」。

創業家の意向で身売り 破格のプレミアム

寺島薬局は茨城県内を中心にドラッグストア約100店、調剤薬局17店を展開。99年には介護事業に乗り出し、物販だけに頼らない新たなドラッグストア像を模索してきた。

 同一地域に集中出店し効率経営を追求するドミナント戦略を取る同社に対し、ライバル会社が相次ぎ地盤へ参入。2002年にはイオンの出資を受け、「イオン・ウエルシア・ストアーズ」の一員としてPB商品を取り扱うなど反撃に出た。が、07年2月期には売上高472億円と前期比微減、営業利益は7・5億円と33%落ち込んだ。以後、不採算店を閉鎖する傍ら、強みである介護事業に力を入れているが、09年2月期も減収減益は免れそうにない。

苦戦が続く中で浮上した今回のウエルシアによる買収話。先導したのは5割近くの株式を保有していた創業家代表の孝雄氏だった。

07年5月に社長から取締役相談役に退き、「月1回取締役会に出る程度」(同氏)だった孝雄氏だが、今年8月に自らウエルシアと協議を開始。9月16日には氏を通じて、田口武前社長ら経営陣にウエルシアからのTOB(株式公開買い付け)提案書が届く。田口氏は独立路線を模索したようだが、孝雄氏の強い要請に折れ、結局TOBに賛同すると表明。10月半ばには孝雄氏が社長に復帰、田口氏は取締役に退いた。

「ここ2~3年、経営の方向性に違和感があった。(前社長は)業界をオーバーストア状態と見て守りに入ろうとしていたが、寺島薬局にはまだ成長余力がある。どういう形で存続できるか考えた結果、業界黎明期からの仲間で、同じ介護分野に力を入れるウエルシアの鈴木(孝之)会長と目指す方向が一致した」と孝雄氏はその経緯を説明する。

10月30日に終了したTOBで、ウエルシアは発行済み株式の約77%を92・5億円で取得。1株当たりのプレミアムはほぼ100%という“破格”な条件による買収である。

ウエルシア傘下での新体制移行を待って、孝雄氏は経営から再び退く模様だ。「今後はノウハウを吸収して調剤併設店を増やし、1年以内には寺島の経常利益率を現状の1・7%からウエルシア並みの4%に引き上げたい」と期待を膨らませる。


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