正念場のアベノミクス、金融政策が切り札に

再び金融政策依存に陥るのか

11月20日、日本経済再生の期待がかかる「アベノミクス」が正念場を迎えている。ニューヨークで9月撮影(2013年 ロイター/Eric Thayer)

[東京 20日 ロイター] -日本経済再生の期待がかかる「アベノミクス」が正念場を迎えている。今年4月の日銀による「異次元緩和」で円安/株高が加速し、、安倍晋三政権が念願とする脱デフレの達成は至近距離に迫ったかに見える。だが、政策展開を取り巻く内外の環境は一段と厳しさを増している。

一服感のあるアベノミクスは当初の快進撃モードを取り戻せるのか、マクロ経済政策の課題を探った。

「5.22ショック」で生じた出力低下

米連邦準備理事会(FRB)の次期議長候補、イエレン氏の米議会証言内容が伝わった今月15日の東京市場には、大きな力が働いていた。久しぶりに見る「株高/円安」の大きなうねりだった。日経平均<.N225>は、取引開始直後に1万5000円の大台を回復し、ドル/円も節目の100円を突破した。

マーケットの動向を注視していた麻生太郎副総理兼財務・金融担当相や財務省関係者には「ほっとしたムードが広がった」と同相周辺筋は振り返る。

イエレン氏が米量的金融緩和の縮小(テーパリング)を急がないという姿勢を示せば、ドル高機運が後退し、その反射的な動きとして円高リスクが高まる。それを意識する市場関係者は多く、政府部内にもイエレン発言を不安げに見守る向きがあったという。

ところが、イエレン氏の議会証言を知り、超金融緩和策がしばらく続くとみた市場は、まず米株を買い上げ、リスクオン・ムードが急拡大。これをきっかけにドルが買われ、これまで動きが鈍かった対円でもドルが上昇して、あっさりと100円を突破した。

安倍政権はなぜ市場動向に重大な関心を寄せるのか。政権周辺の関係者は「5.22ショック」を理由に挙げる。バーナンキ議長は5月22日の議会証言でテーパリング早期着手の姿勢を垣間見せ、その後、米株とドルは急落した。翌23日の東京市場でも為替がドル安/円高方向に振れ、日経平均も年初来高値をつけた後、大幅に下げた。「誰が何を理由に日本株を売っているのか、確認しようとしたがすぐには分からなかった」とある政府関係者は語る。

日経平均は同23日午前、このバーナンキ発言を十分に織り込まない段階で今年の高値を記録したが、急落した後はいまだにその水準を抜けずにいる。今年前半、株価の上昇とともに順調に上がってきたブレークイーブン・インフレ率(BEI)も今は1.6%台でこう着状態にある。BEIは物価連動国債と普通国債の利回り差から割り出した期待インフレ率を示しており、リフレ派の岩田規久男・日銀副総裁も重視してきた指標だ。

アベノミクスの噴射力を支えてきた市場の「期待」が、株価のこう着感によってだんだんと頭打ちになっているのではないか。政権幹部の胸中にはこうした悩みが増幅し始めているかに見える。

安倍首相は株価、為替、期待インフレ率という3つのデータの好転を挙げ、「アベノミクスで日本経済は好転してきた」と力説してきた。長らく円高に悩まされてきた大阪商工会議所の佐藤茂雄会頭は今月5日、大阪市内で行われた大阪経済4団体共催による黒田東彦日銀総裁との懇談会で、「何よりも、昨年と同じ事を申し上げる必要がないことを大変、喜ばしく思っている」と異次元緩和で円安になったことを取り上げ、同総裁を激励した。

確かに5月22日まで、アベノミクスは順風満帆だった。外為市場での円安によって株高が進み、その結果として企業経営者や個人投資家のマインドが好転し、その勢いを駆って消費や設備投資の増加に弾みがつくとみられていた。しかし、この政策シナリオを支えるべき「円安/株高」というアベノミクスのメーンエンジンは、「5.22ショック」によって変調し、企業の設備投資に火を付ける前に出力が急低下した。

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