なぜ中国の株価はこんなに安いのか? 中国の資本市場発達が香港を廃れさせる?

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本土の経済特区の進展が、香港を廃れさせる?

繰り返すが、中国経済が順風満帆で問題がない、と言っているわけでは決してなく、壮絶に無駄な公共投資とバブル、そして金融危機後の大規模金融緩和の副作用としての不良債権とシャドーバンキング問題があるが、それに対するバッファーも有しており、一部で面白おかしく書かれているような破局と崩壊が起こるわけではない、ということである。

また中国政府は上海に経済特区をつくるなど経済の開放を一段と進めており、海外資金の流入も長期的に進展していくだろう。そしてそのことは、実は香港などの特別行政区にとって大きな脅威になっている。

香港は中国経済への窓口として、中国本土の成長と、発展していない資本市場のアービトラージで繁栄してきた都市だが、将来外国人投資家が中国本土の証券市場に信任を高め、外貨で自由に人民元や中国本土のAシェアを買えるようになったら、香港の相対的地位が低下していくことだろう。

すでに中国への返還から20年近くが経ち、中国本土との完全統合まであと30年足らずとなった香港。そうなったらついに私の毎年3割くらい上がっているマンションの家賃も値下がりするかしら、とほのかに期待しつつ、香港の自宅からシンガポールに飛び立つ19日は火曜の夜であった。

ムーギー・キム 『最強の働き方』『一流の育て方』著者

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Moogwi Kim

慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、大手コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当した後、香港に移住してプライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務に転身。英語・中国語・韓国語・日本語を操る。著書に『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』と『一流の育て方』(母親であるミセス・パンプキンとの共著)など。『最強の働き方』の感想は著者公式サイトまで。

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