なぜ中国の株価はこんなに安いのか? 中国の資本市場発達が香港を廃れさせる?

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機関投資家に関して言えば、外国の資金は適格投資家にのみ認められたQifiという制度があるが、200兆円を超える時価総額に対しその枠は8兆円程度で、外国人投資家からの需要をフルに引き付けることができない。また日本には国内の資産運用会社や保険会社などの機関投資家が長期的に公開株で資金を運用するが、中国ではまだ資本市場の歴史が短いので、国内機関投資家が育っていない。

おまけにここ2年近く、会計数値への信頼性の問題からか、当局がIPOをストップしているため、上場しなければならないのにできない企業の数は実に数千に上っており、これも株式市場の活動を冷え込ませている。また将来潜在的に株式市場の資金を吸収する上場予備軍がたまっているので、既存の企業に資金が回るか、資金のサプライ面での懸念も残っているのだ。

ただし株式への需要の観点で見れば、外国人投資家の枠も拡大するし、国内機関投資家も育っていくし、現在の10倍という株価水準を考えれば長期的に見通しは明るいであろう。そもそも過去10年で所得が何倍にもなったのに、株式市場の時価総額が大して変わっていないことからも、いかに“創り出された莫大な富”が株式に回っていないかがよくわかるだろう。これは日本人とも共通のメンタリティなのだが、中国の人々は貯蓄意欲が強く、これが銀行を通じて国有企業へのファイナンスに回され、無駄な公共投資につながっている側面があるのだ。

シャドーバンキング問題の実態

ここまで無駄な公共投資に関して述べてきたが、これは地方の役人が自身の出世競争のために他の都市より高い経済成長率を達成しようとするので、無駄に需要を刺激して、サプライサイドに回らない、つまり生産性を高めない無駄な道路や建物が大量に建てられている。また企業のバランスシートを見ても“その他貸付金”というよくわからないアセットが多いのだが、これが何を隠そう、他企業への不透明な貸し付けである。

しかしながら、これら銀行貸し出し以外の金融であるシャドーバンキングの問題に関して言えば、正確な規模は把握されていないが総じてGDPの半分くらいだろうと見積もられている。そしてシャドーバンキングのすべてが別に不良債権であるわけではなく、たとえば不動産投資にしても日本のバブル時と異なりLTV(Loan to Value: 不動産価格に対する自己資金の割合)が50%と極めて高い物件が多いので、不良化しているのはシャドーバンキングアセットのさらに半分程度だろうともされている。もちろん正確な数字は誰も知らないわけだが、大きな違いは中国の中央政府は潤沢な資金をバッファーとして持っているということだ。

シャドーバンキングからの不良債権を処理するために中国政府はお金を刷る必要が無く、リザーブで対応できるだろう点も見逃せないだろう。

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