オーガニックコットン市場を開いた商社マン ニッチ繊維を“大衆化”せよ!

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起爆剤は「数打ちゃ当たる」の先に

どうやったら市場が広がるのか考えた結果、狩野はひとつの本質的な問題点があると考えた。それは、オーガニックコットンが持つ付加価値が、そもそも顧客に十分伝わっていないことだった。

「環境に優しい」というウリ文句は、確かに時宜にかなっている。ただ、その反面、値段が高いうえ、化学物質の使用が厳しく制限されている。そのため、カラーバリエーションが限定されるという短所を抱える。一般的なコットンと同じ土俵で戦っていたら、オーガニックコットンに勝ち目はないように思えた。

必要だったのは、一般消費者に強い差別化イメージを与えるきっかけだった。環境負荷の低いコットンという印象を根付かせるうえの、“媒介役”となる何かを見つけること。それが問題解決の早道になると考えた。

その“何か”を見つけるべく、2006年はとにかく走り回ったと言う。「下手な鉄砲、数打ちゃ当たる、の勢いで、いろいろなところに顔を出しました。もともと付き合いがあったSPAのツテ、学生時代の野球部のキャプテンのツテ、社内外の飲み仲間のツテ、と頼れるところは全部頼った」(狩野)。

そうして張り巡らせた営業網が、ひとつの重要な出会いを招く。

2007年初、狩野は会社の先輩からMr.Childrenのコンサートグッズ担当者を紹介された。この担当者も、自然やエコをモチーフにしたコンセプト商品を探しており、渡りに船の商談だった。「初めて話をしたときにピーンと来た。これはすぐに始めないと、と思った」。狩野は、こう振り返る。

話はトントン拍子で進んだ。その年の夏に開かれたMr.Childrenの15周年ライブツアーが、グッズ発売開始の場となった。オーガニックコットンで作られたTシャツ、タオルなどの公式コンサートグッズが、各会場の売り場にいっせいに並べられたのである。

この中で、オーガニックコットンという繊維は、「人や環境に配慮された雑貨」として、全面に押し出された。このツアー内でのオーガニックコットンの使用は、絶大なインパクトをもたらした。

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