超富裕層がすごい美術館を建てたがる事情 プライベートジェットの保有にもワケがある

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超富裕層が設立することの多い一般社団法人、公益財団法人の具体的なメリットを見てみよう。

まず、社団法人は特定の目的のための組織で、活動の範囲は幅広い。実は2008年から要件が緩和され、営利目的でも設立できるようになった。株式会社と異なり株式などの持分が存在しないため、相続税はかからない点が大きな特徴であり、比較的容易に設立できる。

しかも、親が代表者となった法人に資産を移す際、資産に対して課税されるものの、親が死亡した際には子どもを代表者とすれば、社団法人には持分がなく相続税がかからないので、財産を保有し続けることができる。

昨今、この仕組みを節税に使うケースが増えている。しかし、直近の税制改正により、社団法人の理事・役員が亡くなったとき、程度によっては、社団法人が亡くなった理事・役員から一定額の財産を取得したと見なして、相続税が課税されることになった。同族の理事・役員の数を調整することも考えられるが、親族外の理事・役員が増えると法人運営が難しくなることが予想される。

公益法人への寄付は控除され、資産の移転は非課税に

一方、財団法人は、企業や個人の資産を運用、活用を目的とした組織である。大企業の創業者一族などの超富裕層の場合、美術館等の公益財団法人を設立するケースも多い。公益財団法人の設立は、公益性という点を満たさないと認められないため、ハードルが非常に高い。原則として、法人税がかからないだけでなく、一般社団法人と異なり資産を移転させる際には課税されない。

個人が美術品を買っただけでは何の節税効果もないが、公益財団法人に寄付をした場合、所得税の寄附金控除が受けられる。また、コレクターが亡くなって、美術品を寄贈する際は相続税が生じないなど、法人税・所得税・相続税のすべてで税務上のメリットが享受できる。自社株が資産の大半を占める企業のオーナー経営者の場合、相続の際の納税資金をどう捻出するかが悩みどころだが、事前に自社株を公益法人に移行することで、相続財産を減らせるうえに安定株主の確保にもなる。企業のオーナー経営者の場合、社会貢献と自社株を守る双方の観点から、公益財団法人を創設しているケースが多い。

次ページ国税庁が過度な節税や相続税回避に目を光らせるように
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