三菱自動車「アイミーブ」、大幅値下げの深層 世界で初めて量産されたEVの命運

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三菱自動車にとって、いまや次世代車の本命はEVではない。EVで培ったノウハウを生かして開発した「プラグインハイブリッドEV(PHEV)」だ。これはEVとしても、エンジンとモーターを併用するハイブリッド車(HV)としても使うことができる技術だ。

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販売好調なアウトランダーPHEV(撮影:風間仁一郎)

今年1月に投入した新型SUV(スポーツ多目的車)「アウトランダーPHEV」は、電池のトラブルで一時生産、販売を中止したものの、順調に販売を伸ばしている。生産を担う岡崎工場では今年10月までに月産能力を2000台から4000台に倍増したほどだ。開発担当の中尾龍吾・常務取締役は「期待ほど伸びないEVに対して、PHEVは想定以上だ」と話す。

ベースとなっているアウトランダーは、エンジン排気量2000cc級の中型SUV。車高や座面が高く、悪路走破性が特徴で、HVをはじめとするエコカーが手薄な分野だ。11月6日に発表した次期中期経営計画では、2015年度以降のSUV新型車の投入や、次世代PHEV技術開発に力を入れることを表明した。

ルノー・日産との提携がカギ

では三菱自動車にとって、EVの位置づけはどうなるのか。すでに多額の投資をしており、おいそれと撤退するわけにはいかない。

今後のカギを握るのは、ルノー・日産自動車連合との提携だろう。三菱自動車とルノー・日産連合は11月5日に業務提携関係を拡大すると発表。その一つとして、EVでの提携強化を挙げている。技術開発や新車の共同開発を進めていくことにより、投資を押さえながら、事業の継続を図る。

年間販売台数が約100万台という世界でも規模が小さい三菱自動車。厳しい競争にさらされる中で、生き残りに向けた独自の道を探っている。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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