田原総一朗「メディアに中立なんていらない」 「中立を掲げることは一種の逃げだ」

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ジャーナリズムに生きて60年。田原総一朗氏は、舌鋒鋭く現在のメディアの問題点を指摘した(撮影:尾形文繁)
新聞をはじめとするマスメディアは、きちんと機能しているのだろうか。「メディア不信」「マスゴミ」といった言葉が珍しくなくなった昨今、その存在意義が問われ続けている。60年以上最前線で取材活動をしてきた田原総一朗氏は、多くのマスメディアが掲げる「中立公平」がメディア自身の行動を縛っているという。これからの目指すべき方向性を聞いた。

——メディアが抱えている問題はどのようなことがありますか。

テレビの1番の問題はコンプライアンス。視聴者からのクレームが怖い。昔は電話でかかってきたクレームに対して、担当プロデューサーが謝れば収拾がついた。今はクレームがネット経由で番組の編成管理やスポンサーにいって、スポンサーがおりることにも発展する。すると制作側もなるべくクレームがこない無難な番組をつくろうとする。そういう番組が多くなったのが大問題だね。

安倍晋三内閣になって、そちらからの圧力が(テレビ局に)かかったという事例も聞いているけど、それよりもクレームが怖い。テレビ局上層部も無難な番組をつくろうとするし、権力からにらまれたくないというのがある。

もう1つは政治に関する番組や特集をやっても視聴率が取れない。ワイドショーもほとんど取れないし、今視聴率が取れるのは台風などの自然災害。それから体操、ボクシング、アメフトとかのパワハラとかそういう種類のニュースだね。

マスコミは事実を追求せよ

——新聞についてはいかがですか。

日本の新聞社には言論の自由はない。どこもそうだ。読売新聞、産経新聞は安倍内閣応援団で、安倍さんの批判はできない。朝日新聞や毎日新聞は安倍批判の新聞だから、安倍さんのいいところをいいとは言えない。朝日新聞や毎日新聞で安倍さんのいいところを書いている記事を読んだことありますか?

この前、日本経済新聞の幹部に言ったんだ。「今は完全に借金財政。日本銀行の(金融緩和の)出口戦略もまったくない。東京オリンピック後の不況ははっきりしてる。どうしてそのことを日本経済新聞は書けない?」って。その幹部は「おっしゃるとおりで……」ってそれっきりだったね。要するにあたりさわりのない記事ばっかり。新聞社のカラー以外の記事を書けないんだね。マスコミは事実を追求しなきゃいけないよ。

昔、朝日新聞の幹部に、マスメディアは権力批判、権力監視でいいけど、朝日新聞ならば批判だけではなく、対策を考えるべきだと進言したことがある。そしたらその幹部は、対策をまともに考えようとしたら研究所をつくらなければいけない。お金も時間もかかる。何よりも労力が必要になる。でも批判だと何もいらない、と答えたよ。

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