リニア計画本格始動、10兆円効果めぐり誘致合戦も過熱

リニア計画本格始動、10兆円効果めぐり誘致合戦も過熱

名古屋の摩天楼・JRセントラルタワーズ。名古屋駅に併設された世界一高い駅ビルである。だが、鉄道関係者たちが視線を注ぐのは、地上250メートルの最上階ではなく、一般客には決して明かされない地下空間。2本の地下鉄路線より、さらに20メートル以上も深い場所に「人工的に整備された空間が広がっている」(鉄道関係者)。人知れず生まれたこの空間は2025年にこう変わる。「リニア中央新幹線・名古屋駅」。日本の社会、経済を一変させる超特急の主要駅になるのである。

「夢の超特急」の名のとおり、超電導リニアモーターカーは、ごく最近まで夢物語として語られることが多かった。技術開発の進歩は著しいが、「国土交通省は従来型の整備新幹線の計画で手一杯。リニアをやる財源などどこにもなかった」(国交省関係者)からだ。

それに業を煮やしたのが、JR東海だ。07年末に突如、首都圏から中京圏までの建設に必要な5兆1000億円を全額自己負担すると表明。「十分な根回しがなく、国交省を混乱させた」(業界関係者)というが、これで事態は一気に動く。「陳情に行っても、無反応だったのにあれを契機に国交省は前向きになった」(愛知県の経済団体)。

今年10月にはJR東海がリニア建設に必要な地形・地質調査の結果を国交省に提出。国交省が年内にも輸送力や建設費など4項目の調査を指示する見通しとなった。

JR東海が計画を急ぐのには理由がある。日本の大動脈・東海道新幹線の輸送能力が限界を迎えているためだ。「設備も老朽化し、今後30年はもたない。ある時点で3カ月、半年と運休して抜本的な改修工事をする必要がある」(岐阜大学・竹内伝史教授)。しかし、運休に伴う社会的、経済的影響は大きすぎる。リニアはその場合の代替路線になる。

代替路線とはいえ、そのインパクトは絶大。最終的に60分で結ばれる東京-名古屋-大阪は日に7000万人が行き来する「リニア都市圏」として一体化する。三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、首都圏~中京圏の開業でも50年間で10・7兆円の経済効果が発生すると見る。

色めき立つのは、経済界や自治体だ。リニアは地元の命運を一手に握ることになる。

リニア新幹線はほかの整備新幹線と同じ「全国新幹線鉄道整備法」(全幹法)にのっとって建設される。1973年に決まった「基本計画」では、起点は東京都、終点は大阪市、主な経過地を甲府市付近、名古屋市付近、奈良市付近としたが、それ以降、ルートや駅の具体名が正式に挙がったことはない。それが各地域の誘致合戦に火をつけている。

ただ、1990年からJR東海が実施した地質・地形調査でルートは絞り込まれた。南アルプスの北側から長野県の木曽谷を南下する「Aルート」、同県の伊那、飯田付近を通る「Bルート」、南アルプスを一直線で貫く「Cルート」の三つだ(下図参照)。

北陸新幹線の建設によって、北陸方面を意識したAルートの可能性はかなり低くなっている。JR東海の自己負担の前提は、直線のCルート。最短距離で建設コストも低い。専門家も「リニアは東京からの移動時間を短くするのが目的。北に回す意味は薄く、Cルートが妥当」(中京大学・奥野信宏教授)と見る。

直線ルート拒む長野 JR東海はどう崩すか

JR東海にとって頭が痛いのは20年間、「県の総意」としてBルートを主張してきた長野県との調整だ。飯田地域のほか、製造業の集積地である諏訪地域も通るため、途中駅を設置すれば経済的な効果は大きい。

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