藤巻さんはガラガラポンのあと、何になる? 『トーキョー金融道』同窓会 第3話

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2002年、東洋経済発刊の月刊誌『金融ビジネス』に、人気連載があった。その名は「東京金融道」。インスパイア社長(当時、現在は取締役ファウンダー)の成毛眞氏が、「金融のプロ」である藤巻健史氏(フジマキ・ジャパン代 表)と松本大氏(マネックス証券社長)に「金融の掟」を教わる、という趣旨の鼎談企画だった。この連載は、2003年刊行の『トーキョー金融道』に結実している。
2013年10月某日、その伝説の3人と担当編集者2人(日経BPの柳瀬博一さん、東洋経済のヤマダ)とが10年ぶりに集結。藤巻氏は7月の参院選挙に当選したことから、その仕事っぷりを見るためにも、集合場所は参議院議員会館とした。

なぜ藤巻さんは政治家になったのか。松本氏、成毛氏が考える日本を復活させるための秘策とは? 改ページなしでどんどん読み進めるスクロール絵巻を、6話に分けてお届けします。

第2話より続く

藤巻(早口でまくし立てるようにして) ガラガラポンというと、みんな僕が過激だって言うんだけど、僕じゃなくて数字というか、現実が過激なわけですよ。貯めてしまった国の1000兆円の借金なんて過激もいいところの額なんだから。なんとかマイルドな解決案をと言われたって無理ですよ。僕は経済の話をしているの。哲学とか思想の話をしているんじゃないのだから、僕の意見が過激だと思うなら、どこが過激なのかきちんと経済の言葉や数字で反論してほしいんだよね。

ただそうはいっても政治家なんだから何か貢献策を出せって言われるわけよ。だけどね、僕は10数年前からずっと僕なりの政策を言い続けてきたわけですよ。しかし聞いてくれなかった。この段階になって何か方策を考えろと言われたって、1000兆円もの借金が急速に溜まってしまった後ですからね、きわめて難しいわけですよ。ここまで時間を無駄にしちゃうと。となると、もう残念ながら、やっぱりガラガラポンしかないのかな。そして新しい日本ができると思う。

ただ財政破綻がするっていっても、別に日本がなくなるっわけじゃなくて、昔で言えば軍国主義日本が終わって資本主義国家、民主主義の日本ができたのと同じことが起きると言っているわけ。でもその前にはやっぱり終戦みたいなガラガラポンが起きてしまう。だからここまで財政が悪くなるとそれが起こらざるを得ないのかなと思うわけです。

今の日本は1945年の7月15日だと思っているわけですよ。終戦1カ月前ということ(ここまで一気に)。

成毛:えっ? そういうこと?

藤巻:うん。だから1カ月しかないの、終戦まで。

ガラポン後の政府に関与したい

成毛:(のけぞりながら)おいおい。そういう話になるの。

藤巻:敗戦濃厚の時でもアメリカに勝つ作戦を考える人も重要だとは思います。だけど、より重要なのはガラガラポンがあった時に、新しい日本の青写真を描く人だと思うのですよ。今後の日本の100年の大系だから。青写真を描く時にはその政権に参画したいなあ、と僕は思っている。

成毛:なるほどね。

ヤマダ:今の段階で政治家になっちゃっていると、戦犯になって公職追放でしょう。

 藤巻:政権与党だとそうなる。だから自民党から立候補しなかった。自民党の議員であればパージされちゃうんですよ。政治の世界にいたほうが新しい青写真つくり用の人材としてピックアップされやすいかなと思うわけ。でも自民党だったらダメなパージされてしまう可能性が高いから今は野党がいいなと思ったの。

ガラガラポンがあるということは、円が無茶苦茶安くなるんですよ。もしくは財政破綻でハイパーインフレになったとしても、ものすごい円安になる。そういう時には、もう国に頼れないから、自分で財産を守れと言っているわけです。その後は100年の大計を考えて素晴らしい資本主義国家をちゃんと作っていくから、そしたらまた資産を円に戻してくれればいいわけ。これだと、松本さんの足を引っ張っていないでしょ(笑)。

ヤマダ:藤巻さんも10年前から主張が全く変わってない。

藤巻:そりゃ、変わりようがないんだよ。

ヤマダ:ガラガラポンのあとには大臣になっちゃうわけですか?

藤巻:いや、大臣とかそういう問題じゃなくて、要するに…

ヤマダ:何になるんですか?

日銀総裁という線も

藤巻:いや、知らないですけど青写真を描く人になる。資本主義の国にしていく。僕は今の日本ってすごい社会主義だと思うから。

松本:次の同窓会の時はフジマキさんは大臣かもしれない(一同笑い)。

藤巻:(その突込みには反応せず)私は資本主義、自由主義の社会を作ろうかと思っています。日本はね何度も言っているけど・・・・。

成毛:おっとっと。日銀総裁という線も。

松本:(笑いながら)日銀総裁!

藤巻:いやいやいや(笑)僕を日銀総裁にするとマイナス金利を導入しちゃうから大変ですよ。ただこうした話は過激なのであまり言わないようにしているんです。

成毛:でも、どこでも言っているから、それ(笑)。昨日どっかで話したことと一緒だと僕は思うんだけど、違うのかどうか。

ヤナセ:全くぶれてない。1999年に『外資の常識』(日経BP刊)を作ったんですから、10年以上前ですよね。

藤巻:そう、そう。その本の中に、冗談で、「日銀総裁やらせてよ」とは、確かに書きました。

成毛:全然変わらない。まさにお家芸といっていい。

松本:素晴らしいですよね。

藤巻:でもね、そういう話は別として、僕はどんどんインタナショナルの世界へ向かってつき進んでいる松本さんとこの10年、全く逆の方向を走っている。ますますドメスティックの世界に入っているわけです。そしてどんどんIT化からも反対の世界へ向かっている。政治はぜんぶ紙です。プレゼンテーションをするように頼まれるんだけど、PCを使って説明したのは1回しかない。「そろそろパワーポイントとかPCを使ってやりましょうよ」と言ったら賛同してくれる人はいるんだけど、相変わらず全部紙だもんね。

ヤマダ:政治の中に入って、中から危機を主張すると、やはり政治家の中に賛同者は増えてきていますか。

藤巻:若い人達は聞いてくれる。少しずつ聞いてくれているのかなっていう気もするし。

ヤマダ:党を超えてですか。

 藤巻:まだ議員になって2~3カ月ですから、まだまだですね。だけど、なるべく浸透させたいなと思っています。予算についていろいろ話を聞くのですが、各省庁とも予算が余った場合に他に回すだけで、返すという発想がない(長いので説明を省略します)。要するに、このままでいくと本当に日本の財政は危ない。やっぱり危機意識が欠如しているわけですよ。

新札が出てくる国会のATM

成毛(おもむろに)ところで、ここの会議室にあるカレンダーはどうして「りそなグループ」なんですか?

藤巻:ここ(参議院議員会館)の下に支店あるんです。給料はりそな銀行に振り込まれる。だってここの周りには全然、銀行がないんだもん。霞が関と永田町は昔からりそなです。

成毛:そうなの? (あさひ、大和が合併して)りそなになってから?

松本:もともとは大和銀行です。だから役所もそうですよ。役所は最近ちょっと他の銀行も増えているみたいだけれども、だいたいがりそなです。国立大学もほとんど、りそな。郵貯とりそなです。

成毛:そうなんだ。フジマキさんには、なんかそのへんからメス入れてほしいですね。ちょっと方向の違う話ですけど。

藤巻:でも、りそなが撤退しても、採算面からほかの銀行がどこも進出してくれないと不便だよな~。ところで、ここのATMで引き落とすと必ず新券が出てくるんだよね。だから結婚式なんかで新券に替えなくていいんだ、これ。

松本:心憎いサービスですね、それは。

ヤマダ:包むことは多いんですか。

藤巻:でもそれを今やったらいけないんだよ、うれしいことに。

ヤナセ:あ、そうか。

藤巻:公職選挙法で禁じられていますので。でも一番困ったのはね、年賀状です。皆さん、これから僕は書きませんから、よろしく。返礼で自筆だったらいいんだけど。もちろん選挙区の方に限るんだけど、僕の場合は全国区だからさ、誰にも出しちゃいけないみたい。

成毛:年賀状をLINEで出すとかそういうのはいいの?

藤巻:それしかない。何もしないと、「あいつ議員になったとたんに偉そうに」とか「返礼しか出さない。傲慢になった」って言われるのがおちだから。恩師に返礼は、いくらなんでもまずいよね。

松本:メールは駄目なんですか?

藤巻:そうか。メールはいいんだと思う、確かにメールで連絡すればいいですね。

パピルスと炭は1000年は持つ

成毛(突然、大きな声で)あ、そうだ。思い出した!(といって小さなメモ帳を取り出してなにかを書き始める)思い出した。やべー。

藤巻:(何がやばいのかを聞くことはなく)これはなんですか。紙のメモ帳ですね?

成毛:こっちのほうがいいんですよ、やっぱり。

藤巻:これいいよね、僕もこれ好き。

松本:僕もスケジュール帳とかは今だに紙ですよ。

ヤナセ:それは何ですか。メモ帳?

藤巻:これね、終わったらビリっと破けていいんだよね。それが快感。仕事を一つ、やり終えた、という。

成毛:そうそう。結局ね、書いたやつをPCに入れるんですけどね。

松本:ボクもスケジュールは紙なんですよ。中学生のときからずっと同じものを使っています。

成毛:さすがにスケジュールは全部ネットだな。

松本:ボクはリドの手帳。色は毎年変えるけど。これね、絶対なくならないから。電池切れないし、水に落としても大丈夫だし。

成毛:でも燃えたらおしまいだったりして。

ヤマダ:クラウドに入れておけば、どこからでもアクセスできるから便利ですよ。水に落としても大丈夫だし。

松本:でもクラウドはなくならないということが実証されていないですからね。何年間持つかが分からない。これ(紙の手帳)2000年か3000年は持つ。炭素とパピルスは実証されていますからね。

藤巻IT業界の人がそういうこと自慢しちゃっても困るよなー。

成毛:えーと。今日はなんだったっけ? 本当によくわからない、話がよく分かんなくなってきたぞ。

ヤマダ:この次は成毛さんの10年を振り返る、ということで話を進めていきましょう。

(4話「成毛さんは夢だった本屋の道をまっしぐら」に続く)

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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