日本の財政、残された時間的余裕は少ない 「経常黒字だから大丈夫」は危険

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1980年度には名目GDPの10%という規模だった家計部門の貯蓄余剰は縮小し、代わりに企業部門の資金余剰が大きくなっている。1998年度以降、企業部門は貯蓄が投資を上回る、資金余剰の状態が続いており、多くの年度で、家計部門よりも大きな資金余剰になっている。1990年代末以降、日本の経常収支黒字を支えてきたのは、企業部門の黒字だと言っても過言ではない。

政府の赤字を支えてきた企業の黒字にも終止符か

日本の企業部門が貯蓄・投資バランスで大幅な黒字を出すようになった理由は、バブル景気の最中に過剰な投資を行い、過剰債務に陥ったからだ。企業部門の純債務のGDP比は1980年代初めの80%程度から1989年度には145%近くにまで上昇した。バブル崩壊後は投資を抑制することで徐々に過剰債務の削減が計られたが、純債務のGDP比は高止まりを続けた。

しかし、1990年代末になると企業は貯蓄・投資バランスが黒字を出して急速に債務の圧縮を行うようになり、2012年度にはバブル前を大きく下回る60%台前半にまで低下している。

政府の成長戦略が成功を収め、企業が日本経済の先行きに対して自信を深めれば、資金を借り入れて債務を拡大する余地はかなり大きい。少なくとも、2000年代に入ってからのように企業部門の大幅な貯蓄余剰が続く、ということはなくなる可能性が高い。

そうなれば、企業部門の余剰資金で大幅な財政赤字を賄うということはできなくなるはずで、そのときに大幅な財政赤字が続いているならば、経常収支は赤字になって、海外からの資金流入が必要になる可能性が高い。

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