一流で活躍し続けるための「二つの武器」 現役29年間、工藤公康の“結果を残し続ける力"

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正しく“変化”できるか

なぜ、プロ野球1~2年の間は、結果を出すことができるのか。それは、まだその人の「武器」が知られていないからです。たとえば、ピッチャーであれば、 “球種”がわからない。よく曲がるカーブを持っているのか、切れ味鋭いスライダーを持っているのか、微妙に球が変化するスプリットを持っているのか。さらに、コントロールがいいのかどうかといったことが未知数です。プロで生命線だと言われているボールを「半個ずらせる技術」を持っているのか、それとも多少のコントロールが悪くても勢いで押すことを得意としているのかなど、その人自身の「タイプ」が不明なのです。

そうした “ノーマーク”の状況だと、いくら一流と言われるバッターが対戦しても、対応にてこずることがしばしばあります。そして、そのまま1年が経過してしまったということもよく目にしてきました。

ですが、その状況が5年後も続くことはありません。

たとえば、武器がひとつしかないという情報が相手に行き渡れば、当然、一流のバッターは対応策を考えます。よく曲がるカーブがあると知れば、それを想定しながら、どうすべきか考えるのは当たり前のことでしょう。

一方で、1年間でも結果を残してしまうと、その成功体験を捨てられなくなり、これまでと同じトレーニング方法、キャンプの過ごし方をしてしまう。それが何年も続いているにもかかわらず、変えられないという人を数多く見てきました。

長く結果を出し続けている人は、よくなるために「新しいことを知ろう、理解しよう」ということ怠りなくやっています。20勝をした人間が、永遠に20勝できるはずがない――それがプロの世界の常識です。相手が研究してくる中で、現状維持を続けていたら、今度は負けます。だから、新しい球種を覚えたり、コントロールに磨きをかけたり、それまで投げなかった配球をしたりして、少しでも上のレベルにいけるように「新しいこと」への好奇心を持ち、変化するために実行しなければなりません。

私は身長が176センチ、腕も短く、手も小さい。野球選手としては恵まれた体格ではありませんし、筋肉が人よりも特別に優れているわけでもない。そんな私が現役を29年間続けられた「最大の武器」こそ、「新しいことを知り、理解し、変化していくことだった」と今では思っています。

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