(第5回)新規事業立ち上げのプロセス(前編)

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3.ビジネスプランの策定
 ビジネスプランとして一番重要なのは、この新規事業の目的は何で、それを達成するためにこういうことをやっていくということを、メンバーだけでなく不特定の第三者が見ても、そのビジネスの概要がわかるように文章でまとめた内容です。前述のビジネススキームの資料化、と考えればよいと思います。そのビジネスの細部までイメージが伝わるよう、できるだけ詳しく、そして、わかりやすく書き込んでください。よく、チャートやマトリックスを多用し、ほとんど文章の説明がない事業企画書なども見受けられますが、見栄えだけはよいものの、プレゼンテーションの場では説明しづらかったり、書類が社内を一人歩きした場合、内容が理解しづらいケースなどもあるため、個人的にはお勧めしません。資金部分と収益の検討のためにはP/L(損益計算書)を作成します。

 事業企画書、P/Lのいずれも、時間をかければどこまでも手を加えることができますが、この段階では、いたずらに時間をかけるべきではありません。検討すべき要素を網羅し、熟考したビジネススキームの可能性をきちんと説明できるものであれば、それを事業化検討のテーブルにあげるべきです。新規事業においては、ビジネスプランは動き出してから、現実にあわせて何度も修正をかける必要があるべきものであり、当初から将来を完璧に予想した完成形を作ることは不可能なものなのですから。
新規事業がうまくいかない理由
~「プロ」が教える成功法則~
坂本 桂一 著
場当たりが先行しがちで前に進まない新規事業。失敗率は9割以上とも言われる。成功のために何をすべきなのか。200社以上の事業に生命を吹き込んだ「プロ」のノウハウを大公開。

坂本桂一(さかもと・けいいち)
(株)フロイデ会長。事業開発プロフェッショナル。山形大学客員教授。
専門は新規事業創出、ビジネスモデル構築、M&A。1957年京都市生まれ。
東京大学入学後、在学中にソフト制作会社�サムシンググッドを設立する。以後も(株)ソフトウィング、アルファシステム(株)、アドビシステムズ(株)(当時社名アルダス(株))、(株)ウェブマネーなどを設立し代表、会長に就任。うち数社を年商数百億ビジネスに育て上げる(以上すべて現在は退任)。日本のITビジネスの黎明期より、その牽引役として活躍。ソニーSMC70、シャープX68000、WINDOWS3.0J、プレイステーション等の開発にのスタンダードとして成功を収める。
現在、これまでの実業家経験を生かし、ハンズオン型のコンサルティング活動を行っている。
著書に、『頭のいい人が儲からない理由』(講談社、2007年)、『新規事業がうまくいかない理由』(東洋経済新報社、2008年)がある。

(株)フロイデ http://www.freude.bz/
新規事業開発から既存事業の成長戦略立案まで、総合的、創造的なコンサルティングを実施。特色は「事業立ち上げ経験者」を中心としたビジネスパートナーネットワークによる新規事業立ち上げ、経営改善のハンズオン型サポート。特に成熟ビジネスにおける「新しい付加価値」創造において、多くの実績を保有する。
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