10~20代が「90年代の服」を着るブームの本質 単なるファッション業界の回帰ではない

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たとえば、あなたがインスタグラムのアカウントをもっていれば「レトロ」から始まるハッシュタグや「1990年代」に多くの投稿がなされている。

そういえば、平野ノラさんや、ブルゾンちえみさんも、バブル期の時代批評的お笑いだから、ひとつの回帰現象と見ていいかもしれない。

先日、安室奈美恵さんが引退した。安室さんは、1990年代にファッションリーダーとなり、トップに君臨した時期に長男を出産し、そしてシングルマザーとなりながらもそのまま歌手を続け、時代を駆け抜けた。

現在の10代は、安室さんが巻き起こしたアムラーブームを知らない。あるいはコギャル文化も経験していない。しかし、昨年の安室奈美恵さん引退にまつわる期間限定ショップには親子連れの姿もあった。厚底サンダルもよく売れているという。

動画投稿アプリTikTokの流行ゆえか、パラパラ的なダンスもふたたび流行している。ルーズソックスもふたたび売れ始めている。

「DA PUMP」のミュージックビデオ「U.S.A.」も1990年代のリバイバルとして語られる機会が多い。といっても、リバイバルとは、1990年代を経験した世代の言葉だ。10代の若者は「ダサいけど、ちょっとカッコいい」という文脈で面白がっている。ネットなどで紹介される1990年代の、ちょっとヘンな、でも可愛らしい、という、ねじれた興味深い需要がここにはある。

なお、これは必ずしも批評的ではなく、たんなる遊びに近いものの、インスタグラムで「オタクコーデ」で検索いただければ、1990年代のようなチェックシャツを大きめのジーンズのなかに入れてメガネをかけた写真が大量に投稿されている。一周まわって、ダサいのが、かっこよくなっている。

中古品であっても買い求める

むかし、同世代の女性に、「古着には心理的な拒絶感がある」という話を聞いたことがある。しかし、これも新世代からすると昔の感覚にすぎない。今では、中古衣料も個人間で交換したり、ネットオークションやフリマアプリなどを介して売買したりするのが当然となった。

また、SNSの影響がある。繰り返し指摘するまでもないように、現在ではインスタグラムで有名人をフォローし、そして、そこから消費行動につながる。有名人が身に着けていた衣類や装飾品、バッグなどが対象となる。

注目が集まっているのがハイブランドだ。たとえば「テイラー・スウィフト ブランド」「セレーナ・ゴメス ブランド」で検索してもらえば、彼女らがどんなブランドを身に着けているか“分析”してくれているサイトがいくつも見つかる。そこから興味をもったハイブランドの人気が高まっている。そして、そのハイブランドは、1980年代や、1990年代に、母親が買い求めていたものと合致する。

そこで、有名人が着けているものと同様の、ビンテージブランドを中古品であっても買い求める人が増えている。さらに、それは母親からの譲り受けかもしれない。フリマアプリでの交換かもしれない。できるだけ手軽に手に入れるニーズが高い。

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