専制君主制は必ず滅ぶ!米国への警告 オリバー・ストーン単独インタビュー(上)

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オリバー・ストーン氏は、アメリカの映画監督・脚本家・映画プロデューサーとして、知らない人はいないほど著名な人物である。『プラトーン』(1986年公開)、『7月4日に生まれて』(89年)でアカデミー賞監督賞を2度受賞し、他にも多くの作品を残している。
歴史の真実は実際にその時代を生きた人でも知らないことが多い。政府が国民に知られたくないことを別の「真実」で隠蔽したり、否定したり、あるいは国民が納得するであろう理由や言い訳をでっちあげることもよくあることである。
アメリカが単独の覇権を謳歌してきたことを否定する人はいない。しかしその地位を確立するために、アメリカはこれまで何をしてきたのか。そこに疑問を抱いたストーン氏が、歴史学者ピーター・カズニック氏とつくったのがドキュメンタリー作品の『もう一つのアメリカ史(“The Untold History of the United States”)』である。
私は直接本人にインタビューを申し込み、発言内容をほぼそのまま掲載するという条件で応じていただいた。以下、ロサンゼルスのオフィスで行なわれたインタビューである。
(聞き手、写真:大野 和基<国際ジャーナリスト>)

原爆を投下する必要はけっしてなかった

大野:オリバー・ストーンさんが昨年発表した、ドキュメンタリー作品『もう一つのアメリカ史』(The Untold History of the United States)が、全世界で大きな反響を呼んでいます。同作では第二次世界大戦でアメリカが日本に原爆を投下した理由を「ソ連を牽制し、戦後の国際政治におけるイニシアチブを握るため」と分析。米軍将兵の犠牲を少なくするためだったというアメリカ政府の「公式見解」を否定するような立場を取っています。

ストーン:われわれが、このドキュメンタリーで強調したことは、ソ連侵攻です。これはアメリカ史の中ではほとんど言及されていませんが、核心的な重要性を持ちます。ソ連軍は関東軍を数日で壊滅させ、侵攻してきたのです。ソ連はドイツ、特にベルリンにいた女性や男性に対してひどいことを行いましたが、そのことは日本のリーダーには脅威でした。

また日本軍は1939年にシベリア国境でゲオルギー・ジューコフと厳しい戦いをしました。日本の降伏において、原爆は重要な要素ではなく、ソ連の脅威が重要な要素だったのです。

あなたは、岡本喜八監督の映画『日本のいちばん長い日』(1967年公開)を観たことがありますか?

大野:いいえ。

ストーン:観たほうがいいですよ。素晴らしい映画です。ポツダム宣言の受諾をめぐって会議が紛糾するなか、笠智衆演じる鈴木貫太郎首相が「このままではロシア人に北海道を占領されてしまう」というシーンがあります。ソ連の動きは、日本の降伏にも決定的な意味をもっていたのです。また同作では、三船敏郎演じる阿南惟幾陸軍大臣が、降伏を阻止しようとクーデターに走る将校たちに対処するシーンが描かれており、当時の若者のあいだに狂信的なムードが広がっていたことがわかって非常に興味深い。

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