瀬戸際に立つ建設・流通業界、供給過剰で減収が止まらない

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 業界全体で100店は過剰--。2005年春、総合スーパー(以下、GMS)大手、ダイエーに対する支援が決定した際、産業再生機構はこんな試算を弾いていた。その後ダイエーは54店を閉鎖。それでも業界には50店近い“過剰店舗”が残ったことになる。

GMS業界の売り上げ減少が止まらない。07年度の売上高はピーク時の1996年度と比べ、18・4%減少した。一方で、店舗面積は逆に38・6%も増加。ダイエーが再生機構入りした04年度と比較しても、業界全体で3217億円の売り上げが消滅している(日本チェーンストア協会)。再生機構でCOOを務めた冨山和彦・経営共創基盤CEOは「その後の状況を考えると、100店程度が過剰という状況に変わりないのではないか」と指摘する。

業界最大手のイオン。08年8月中間期では、GMSが足を引っ張り、前年同期比2ケタの営業減益となった。GMS事業を統括する豊島正明専務執行役は「30数年、商品や売り場構成が変わらず、お客様の変化に対応できていない」と危機感をあらわにする。

イオンも手をこまぬいているわけではない。10月にオープンしたジャスコ越谷レイクタウン店。2階にあるトラベル用品売り場では、トランクをはじめ、海外で対応できるコンセント、旅行用の保存食などを一堂に集めた。従来の単品大量販売の発想を脱し、「ライフスタイルに合わせた売り場づくりを目指した」(村井正平イオンリテール社長)。

不振が目立つ衣料品では、9月に「トップバリュ フリース」を投入。同時にオフィスでのウォームビズとして「フリースビズ」を提唱した。商品とキャンペーンを一体化して訴求力を高め、前年比の3倍、210万枚の販売を見込む。グループの商品開発会社、トップバリュ株式会社の堀井健治商品本部長は「ここ1年半から2年で、衣料品売り場は抜本的に変わる」と意欲を見せる。

だが、こうしたイオンの取り組みを上回るスピードで、消費が落ち込んでいる。金融危機が本格化した9月には、今まで売り上げが堅調に推移してきた食品にまで消費低迷の波が及んだ。ある食品スーパーの首脳は「明らかに9月から潮目が変わった」と言う。消費者はより生活防衛色を強めている。

これまで拡大路線をひた走ってきたイオンだが、09年度以降は国内の出店に急ブレーキをかける。さらに、グループのGMS125店を対象に抜本策を実施。うち60店は閉鎖、残り65店は業態転換を実施する方針だ。だが、こうした戦略が公表されたのは今春。半年以上経った今も、どこを閉めるのか、どう業態転換するか、具体策は見えてこない。

縮小する国内市場を尻目に、イオンは中国をはじめとした海外出店に積極的に乗り出している。しかし、国内GMSの売り上げ減少に歯止めをかけなければ、海外戦略にも影響が出る。「3年でGMSを再生させる」(岡田元也社長)。イオンにとって、残された時間は少ない。
   
破綻が相次ぐ建設業 今後も淘汰は必至

「地域のみなさん、すみませんでした」--。中堅ゼネコンの新井組(本社兵庫県)は、10月8日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。同日の会見で、酒井松喜社長は、何度も同じ言葉を口にした。「外部環境が急激に悪化した」、「ここにきて環境がゴロッと変わった……」。

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