惨憺たる3メガバンク決算、保有株式下落で増資へ

拡大
縮小


 10月末、三つのメガバンクグループが相次いで今期業績見通しを下方修正した。市場運用や投資信託の販売手数料などが低迷し、銀行の本業の利益を表す業務純益が減退。さらに、景気後退による与信関係費用(不良債権処理費用)の増加と、株式減損処理の拡大が響いた。

今年度の上期、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下MUFG)は傘下2行合算で与信関係費用2450億円、株式償却1400億円が発生。みずほフィナンシャルグループ(以下みずほFG)も傘下3行で与信費用1300億円、有価証券減損で1400億円を計上した。三井住友フィナンシャルグループ(以下SMFG)も与信関係費用2200億円、株式償却220億円が発生した。

その結果、MUFGの上期純益は前年同期比61・0%減の1000億円に縮小。みずほFGとSMFGも大幅な減額を迫られた。そろって通期見通しも修正したが、再度の減額もありうる。

株式持ち合いがネック

邦銀は欧米銀行と比べて、サブプライム関連の損失は少ない。しかし株式の持ち合いがアキレス腱となっている。

1990年代の不良債権問題から続く2003年春までの株価下落で、各銀行とも保有株の怖さを思い知り、減らしたはずだった。しかしその後、再び増加局面があった。融資競争が激しい中、株式を保有していることが融資にプラスに働くため、政策投資株を減らせなかったのだ。会社法改正の前後には、買収防衛策として事業会社から保有を頼まれる場面も多かった。

9月末時点では株式評価損益はプラスと見られるが、12月末と来年3月末で日経平均株価が8000円台となれば、MUFG、みずほFGは微妙だ。株式評価益の減少は、銀行の資本規制上の自己資本比率を引き下げる。評価損の状態ともなれば、Tierl(中核的自己資本)比率が下がってしまう。

こうした状況に立ち至り、MUFGはコストの高い9900億円の資本調達を余儀なくされた。うち、3900億円は生保など機関投資家からの優先株調達でメドがついているが、6000億円の公募はいつ実行できるかはっきりしない。アコムの連結子会社化へ約1530億円、米ユニオンバンカルの完全子会社化で約3500億円、米モルガン・スタンレーへの出資で9000億円という巨額投資により収益の上積みを狙う一方で、希薄化を招く増資。これが報道されるやMUFGの株価は一段と下げた。

みずほFGやSMFGも増資はしておきたい局面。荒れ相場でコストがハネ上がる中で、調達を迫られる悪循環に再び陥っている。

(大崎明子 =週刊東洋経済)

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