「虐待するかも」と不安な親に伝えたいこと 「相談できる場所」を積極的に探そう

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また、私が理事を務める認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワークが総合窓口を担う子ども虐待防止のための市民運動「オレンジリボン運動」などでも、育児に悩んでいる人はもちろん、虐待を受けている当事者である子ども、妊娠中で困っている人、周りに困っている知人がいるという人など、さまざまな立場の人が相談できる場の情報を提供していますので、こうした情報をぜひ活用しましょう。

児童相談所全国共通ダイヤル「189(イチハヤク)」も育児の相談ができる機関です。

この番号をご存じの方でも、虐待の疑いがある児童を見掛けたときに通告するものというイメージを持っているかもしれませんが、それだけではなく、子育てに悩む養育者自身や、「知人が子育てに悩んでいるようだ」という相談でも利用することができるのです。

もちろん、「虐待の疑いがある子どもがいる」というときにも、「189」に相談してください。

『イラストでよくわかる 感情的にならない子育て』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

ただし、激しい泣き声が聞こえたからすぐに電話ということではなく、かかわりがある親子なら声をかけたり、話を聞いたり、サポートしてあげることも大切です。そのうえで、かかわるのが難しかったり、とても心配な様子が見られた場合に通告するのが望ましいでしょう。

ときどき、「普通に赤ちゃんが泣いているだけなのに通告され、児童相談所が来て、ショックを受けた」という声も聞きますが、反対に「いっぱいいっぱいだったときに、児童相談所の人が来てくれて、子育てのサポートにつなげてくれて助けられた」というケースもたくさんあります。

いい話はなかなか表面化されず、児童相談所の落ち度ばかりが指摘されがちですが、児童相談所は子育てをサポートする専門職がいる機関です。上手に頼って子育ての後ろ盾としてください。

育児中でない私たちにもできること

そして、育児中ではない周りの人々にも、虐待を減らすためにできることがあります。どうか子育て中の親子を温かい目で見守ってください。泣いている赤ちゃんにほほ笑みかけてください。ママやパパの話を聞いて悩みに共感してください。階段で困っている親子を見かけたらベビーカーの持ち運びを手伝うなど、ささいなあなたの行動が、子育て中の親子の心の支えとなることがあります。

一つひとつの行動は小さく見えますが、これらの行動が広がっていき、文化となれば、子どもも親も生きやすい世界につながっていくことでしょう。

子育て世帯をはじめあらゆる世帯を孤立させず、地域の中で助け合っていくことが、子どもの虐待という悲しい事件をなくすと信じています。

高祖 常子 認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事

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こうそ ときこ / Tokiko Koso

子育てアドバイザー。育児情報誌『miku』編集長。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事など多数の子どもの人権を守るための委員を歴任。所属学会は、日本子ども虐待防止学会、日本子ども家庭福祉学会など。東京都出身。短期大学部卒業後、株式会社リクルートで約10年、学校・企業情報誌の編集にたずさわり、妊娠・出産を機にフリーに。幼稚園教諭、保育士などの資格を持っている。著書に『イラストでよくわかる 感情的にならない子育て』『パパ1年生』(かんき出版)など。

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