なぜ高学歴者はがんの「民間療法」に挑むのか がん患者に医者がどうしても伝えたい本音

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ですから、がんの患者さんへお伝えしたいことがあります。それは、代替医療をやっていることを医師に伝えてほしいのです。サプリから健康食品、漢方、気功など何でも結構です。

教えていただきたい理由は2つあります。1つは「その代替医療が病院で行っている治療に影響がある可能性があるから」です。そしてもう1つは、「あまりに高額なものを使わされて、詐欺のようにお金を吸い上げられていることがあるから」です。

現状では、患者さんはほとんど代替医療をやっていることを医者に伝えていないようです。先ほどのアンケートでは、「補完代替医療を利用している患者の61%は、主治医に相談していない」という結果でした。

「怒られるのではないか」と気にする必要はない

こんなことを言うと、「そんなことを主治医に言って怒られるのではないか」とおっしゃる方がいます。

しかし、もはやそんな時代ではありません。医者が患者さんを怒る、しかる時代は終わりました。患者さんが良くなることが、大事です。ですから、患者さんの健康に関する情報は、把握したいのです。ぜひ、伝えてください。

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そして、がん患者さんの診療に携わるすべてのドクターの皆さんへも伝えたいことがあります。それは、患者さんに、「何かサプリなどを使っていますか?」と聞いてみてほしい、ということ。代替医療には思わぬ副作用が隠れていることもありますから。

タイミングについては、まずは初診時がいいでしょう。再発や増悪などのタイミングでも繰り返し聞くようにしてください。そして、くれぐれも「頭ごなしに否定しない」ことが重要です。治療を受けるのは患者さんであり、治療方法を決めるのはガイドラインでも医師でもなく、患者さん本人だからです。ちなみに私は、患者さんにこう言っています。

「サプリなどの代替医療でがんの治療効果が証明されたものはありません。ですから、禁止をするわけではありませんが、あまり高価なものはやめておいてください」

最後に、私は代替医療そのものを全否定する立場ではありません。頻繁に処方する漢方薬がありますし、鍼灸はその効果を自ら体験することで実感しています。そして、場合によっては治療効果のあり・なし以外に価値があるケースも知っています。

中山 祐次郎 外科医

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なかやま ゆうじろう / Yujiro Nakayama

1980年生。聖光学院高等学校を卒業後2浪を経て、鹿児島大学医学部卒。都立駒込病院で研修後、同院大腸外科医師(非常勤)として10年勤務。2017年2~3月に福島県高野病院院長を務め、その後、福島県郡山市の総合南東北病院外科医長として勤務。資格は消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医(大腸)、外科専門医、感染管理医師、マンモグラフィー読影認定医、がん治療認定医、医師臨床研修指導医。モットーは「いつ死んでも後悔するように生きる」。日経ビジネスオンラインやYahoo!ニュースなど多数の媒体で連載を持つ。Yahoo!ニュース個人連載では2015年12月、2016年8月に月間Most Valuable Article賞を受賞。著書に『幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと〜若き外科医が見つめた「いのち」の現場三百六十五日〜』(幻冬舎新書)がある。

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