「挙国一致で農業保護に邁進する日本の不条理」 リチャード・カッツ

「挙国一致で農業保護に邁進する日本の不条理」 リチャード・カッツ

どうも自民党と民主党の役割が変わってしまったようだ。従来、自民党は農村部を地盤とする政党で、民主党は都市部の有権者に支持される政党であった。しかし、7月に予定される参議院議員選挙を前に、民主党は農村部の票をめぐって自民党と競い合っている。両党は、農村部にある29の1人区の結果が選挙の帰趨を決すると信じている。そのため、農村部の票を得るために両党ともやっきになっている。

 自民党の故松岡利勝前農水相がドーハ・ラウンドや日豪自由貿易協定での農産物の自由化に反対していた。安倍首相も安全保障問題でオーストラリアとの関係強化を望んでいたにもかかわらず、松岡路線を支持していた。松岡氏の自殺後、安倍首相は農業政策を変更できる後任を選ぶことができたが、残念なことに保護派の赤城徳彦氏を後任に選んだ。

 日本人にとって本当に必要なことは、農業改革を推し進めることである。これは低価格の輸入品の増加も含まれる。現在、家計は所得の15%を食料品購入に支出している。したがって食料品の価格を引き下げることは、消費者の購買力を高めることにつながる。食料品価格が高い理由は、農業経営が経済的合理性ではなく選挙絡みの政治に支配されているからである。日本の1農家当たりの平均規模はわずか1・59ヘクタールにすぎない。

 これに対してEUは同15ヘクタール、アメリカは191ヘクタールである。EUとアメリカの農業は「規模の経済」を実現することで農業従事者の数を減らしている。しかし自民党は逆の政策を選んでいる。最近まで農家は土地を小売りチェーンのような非農業従事者に売却することができなかった。農村部の票を維持するため小規模経営を維持し、多数の農業従事者を確保しようとしているからだ。

 都市の消費者や納税者にかかる経済的コストは膨大な金額となっている。日本の農業生産コストは他の国より高く、日本は農作物の競争力を維持するために輸入農産物に高い関税を掛けている。それはコメだけではない。WTO(世界貿易機関)によれば、日本は輸入関税を04年の17・7%から06年に18・8%に引き上げた。さらに税金を使って農業に政府補助金を給付している。補助金の総額はGDPの1・3%に達している。これはGDPの1・2%を占める農業部門の総生産高よりも多い。さらに非専業農家の雇用を維持するために河川敷を舗装したりしているのである。

 かつて平均的な東京人の農家に対するイメージは、祖父母の姿であった。だが現在、労働力に占める農家の比率はわずか5%にすぎない。都市の住民は、目的のない橋を作るために高い税金を使ったり、割高な食料品をもう買いたくないと思っているのだ。

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