市場に追加緩和による円安求める声

企業収益は期待値に届かず

11月8日、決算発表のピークを越えたが、日本株の上値は重い。6月13日撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 8日 ロイター] -決算発表のピークを越えたが、日本株の上値は重い。最大の要因は、企業業績が市場の期待値に届かないケースが多かったことだ。期待値が高過ぎたともいえるが、円安が一服する一方、販売数量の増加など本業の競争力回復ははっきりせず、企業の下期予想は慎重だ。

米国で量的緩和の長期化観測が強まり、欧州中銀(ECB)がサプライズ緩和を決め、日銀の相対的な「緩和感」は後退している。競争力回復までの「時間稼ぎ」のとして、追加緩和による円安を求める声がマーケットに広がる予兆もある。

<まだ見えない競争力回復>

好業績企業の代表格であるトヨタ自動車<7203.T>の株価がさえない。2014年3月期の営業利益予想を過去最高益に迫る2兆2000億円に引き上げたにもかかわらず、株価は続落。「11月に決算を迎えるヘッジファンドや、証券譲渡益課税の引き上げを懸念した個人投資家からの利益確定売りが出ている」(国内証券)という需給的な要因もあるが、トヨタが示した業績予想値が市場コンセンサス(2兆3820億円)に届かなかったことが嫌気材料となっている。

原価低減対策などが功を奏し、トヨタの体力は向上。10月以降の為替の想定レートは1ドル95円と現在の98円付近からすると保守的で、アナリストの多くは業績上振れ余地があるとみている。予想株価収益率(PER)は12倍強で、日経平均ベースの15倍強を下回るなどバリュエーション面でも割高感はない。それにもかかわらず、株価の動きは今のところ鈍い。

「円安効果が来期はく落しても増益基調を保てるかは、本業の競争力次第だが、(向上するかどうか)それはまだ見えない」と三井住友アセットマネジメント・シニアストラテジスト、濱崎優氏は指摘する。

中国の成長率目標は引き下げられるとの見方が多く、トヨタが期待する中国市場は減速する可能性が大きい。一方、収益を支える米国の自動車販売も今年がピークとみられている。日本国内では消費税増税の反動が待ち受ける。来期のビジネス環境は今年より厳しくなるが、円安効果を抜きにして増益基調を維持できるとの期待感はまだ醸成されていない。

<通期業績の上方修正、上期分だけ>

企業業績が市場期待値に届かず、株価の上値を押さえている構図は、日本株全体でも同じだ。

大和証券が集計する200社ベースでは、7日までに決算を発表した171社(開票率86%)で上期の経常利益は、前年度比48%増。通期ベースでも33%の経常増益予想だが、事前の会社側予想と同じ水準で上積みがほとんどなかったほか、大和予想に対して6%低い

みずほ証券リサーチ&コンサルティングの決算集計では、7日までの851社(集計対象の1205社のうち70.6%)で2014年3月期業績予想の上方修正は244社(28.7%)、下方修正は130社(15.3%)と上方修正の方が多い。

ただ、小幅な上方修正が多く、通期の経常増益率予想は決算発表前の32.1%から35.4%へとわずかに上がっただけとなっている。

「市場の期待値が高かったこともあるが、通期の業績上方修正のほとんどは上期の増益分が上乗せされただけで、下期の上積み分は乏しい。国内企業の収益は底打ちしているとはいえ、見通しは楽観できない」みずほ証券リサーチ&コンサルティング・シニアクオンツアナリストの米澤忍氏は分析する。

<「緩和競争」の気配も>

輸出データを分析すると、円安効果は為替換算効果がほとんどで、数量増加にはつながっていない。このままの為替水準が続けば、為替換算の円安効果は来期になくなってしまう。市場では「本業の競争力向上にまだ時間がかかるとすれば、もう一段の円安が欲しい」(大手証券トレーダー)との声が出始めている。

一方、世界では再び「緩和競争」の気配が強まり始めている。ECB)7日、予想外の利下げを決定。ドラギ総裁は為替目的の利下げではないとしたが、市場では「欧州は景気循環(の回復局面)に弾みがつくかどうかのタイミングなだけに、為替のユーロ高を許容したくなかったのではないか」(みずほ証券・チーフ債券ストラテジスト、三浦哲也氏)との見方は多い。

米国でも、米財政協議混乱の影響で量的緩和策が長期化。7─9月期米国内総生産(GDP)は2.8%成長と市場予想を上回ったが、在庫投資の寄与度が大きく、個人消費や機械投資は減少しており、中身はよくなかった。テーパリング(緩和縮小)の先延ばしだけでなく、失業率めどの引き下げなどフォワードガイダンスの強化が選択肢に入ってきたとの予想も出始めた。

こうした状況下で、日銀にも追加緩和プレッシャーが高まる可能性があるが、シティグループ証券・チーフエコノミスト、村嶋帰一氏は「展望リポートでは、日本経済は順調に回復しているとの姿を描いている。景気が減速したり、物価上昇のモメンタムが途切れるような場合でないと動きにくいのではないか」とし、円高対応だけでは日銀は動きにくいとの見方を示している。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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