営業から運用、調査と意外に広い保険の仕事【損保編】

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日系企業の海外展開のお手伝いは結構、重労働

国内損保各社は、成長の源泉を海外に求めようと、今、活発に動き出している。だが、もともと損保の海外展開は日系企業の海外進出に伴い、そのサポートをしてきた。東京海上日動の河島泰紀氏も、国内にいながら日系企業の海外展開のサポートを行っている。

1995年に入社した河島氏はマレーシアの首都、クアラルンプールに語学研修生として1年間、現地法人の駐在員として5年間滞在した。現在は、国内大手自動車メーカーの法人営業を担当する。日本に拠点を戻したとはいえ、今でも担当企業の海外工場や海外ディーラーとの折衝で、2カ月に1度は海外に出張する。出張で訪れた国は、ウクライナ、ベルギー、インド、アメリカなどさまざま。「業務は半分肉体労働みたいなもの」と、河島氏は苦笑する。

仕事の一つに「ロスプリベンション(ロスの防止)」がある。たとえば、あるメーカーが完成車を輸出した際、海外の港に着いた船積みの自動車にキズがついていた場合、このキズの原因を解明し、対策を施すのがロスプリベンションという仕事だ。これがかなり地道でハードな作業となる。

まず日本の港で、積み込み前の自動車の外装をチェック。「日本の物流業者は品質が高いので、日本国内でキズがつくことはほとんどない」(河島氏)。自動車を載せた船が出航するのを見届け、飛行機で到着予定港に先回り。港に降ろされた時点、陸路で輸送され販売店に到着した時点と、入念にキズの付着具合を検査する。

キズを発見した場合は、キズを写真に収め日本に持ち帰り、社内の膨大な統計データと照らし合わせ、原因に当たりをつける。「キズの原因が、搬入者が身に付けている指輪でついたキズなのか、ブレスレットでついたキズなのか、そのくらいのことはわかる」(河島氏)という。その後、お客様と防止策を考える。昨年はマイナス15度の韓国の港でも、ロスプリベンションの作業を経験した。

海外駐在から日本に帰国して2年が経つ。最近、また海外に駐在したいと考え始めた。「マネジメントの勉強をしたい。本体の社長は無理でも、どこかの現地法人の社長くらいならなれるかも」(河島氏)と、野望を打ち明けた。

(生保・損保特集編集部)

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